コラム

コメ価格高騰で放映される連続ドラマ『進次郎の備蓄米』にうんざり

2025年06月07日(土)10時24分
西村カリン(ジャーナリスト)

多くの専門家によると、コメ高騰の原因は生産量が足りないことだ。説得力のある説明だが、政府は「足りている」という立場を変えていない。

足りているなら、なぜ備蓄米を数カ月にわたって放出しないといけないのか。なぜ、買い戻しを決定するのが遅かったのか。コメ不足の原因はコメの生産量が少なすぎることだが、政府がそれを認めない理由は何なのか。


政府からの説明がないならマスコミが追及すべきだが、そうする代わりに、人気のある小泉氏に同行取材しながら本人の一方的な言葉をそのまま垂れ流している。

「2000円台の備蓄米」が市場に出回るのはどう考えても一時的なことだ。農家にとっては全く望ましくない政策だろう。すなわち、参議院選挙のための点数稼ぎにすぎない。

たとえ備蓄米放出の影響でコメの全国平均価格が下がったとしても、それが続かないことは確実だ。もし、8月や9月に新米が出ても昨年と同じように供給量が足りない状況になれば、再び価格が急激に上がってもおかしくない。

昨年の夏から続くコメ不足がさらに悪化するリスクがあると政府も分かっているのに国民をだまし、長期戦略を示そうとしない。根本的なコメの生産問題を解決しようとしない。

私は農家や専門家の取材を重ねて、現状の深刻さが分かった。残念なことに、ほとんどのマスコミは「2000円台の備蓄米」のドラマに熱中して、先の状況を考えようとしないし、もっと重要な課題を見て見ぬふりをしている。

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