コラム

日本の「治安神話」崩壊...犯罪増加と「生き甲斐」ブームの関係

2025年05月07日(水)19時58分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
警察、刑法犯、犯罪、生き甲斐、特殊詐欺

STANISLAV KOGIKU-SOPA IMAGES-REUTERS

<刑法犯の認知件数は3年前に20年ぶりに前年比増に転じ、昨年には3年連続増加...日本はどこへ向かう?ヒントは急速にしぼんだ「Ikigai」ブームにあるのではないか>

4月になり、通学路では小学1年生が大きなランドセルを背負っておぼつかない足取りで登校し、駅ではまだスーツが似合わない幼い顔の新入社員がグループになって帰宅している。日本の春は希望にあふれる良い季節のはずだが、なぜか今年は明るい気分になれないのは私だけだろうか。

日本国外ではいまだ続くロシアのウクライナ侵攻や、停戦が守られないパレスチナ自治区ガザの状況、トランプ米大統領の突発的な外交・通商方針の大幅変更といった不安定な状況が続く。国内でも、石破政権のリーダーシップの欠如、給料の伸びを上回る物価の上昇、埼玉県の道路陥没事故で転落していまだ分からない運転手さんの行方(編集部注:5月2日に消防が遺体を発見)、芸能界での性加害問題や外国にまで拠点を置いて暗躍する特殊詐欺グループなど、ドジャースの大谷選手の話題以外は明るいニュースが全然見当たらない印象だ。


暗い話題の1つが、犯罪の増加だ。警察庁によると刑法犯の認知件数は2022年に20年ぶりに前年比で増加に転じ、24年には3年連続増となる73万7679件に達した。東日本大震災の影響を受けた期間でさえ減っていた件数が、新型コロナ禍後の人の動きの回復を背景に増えており、特にネット上での詐欺犯罪の被害額は倍増している。私の電話にも「未払い料金」を督促する詐欺電話が頻繁にかかってくるし、怪しい勧誘の人も訪れる。長期的には02年をピークに認知件数は減少傾向にあるが、このトレンドが変わるのか、気になるところだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:日銀利上げ容認へ傾いた政権、背景に高市首

ビジネス

「中国のエヌビディア」が上海上場、初値は公開価格の

ワールド

米司法長官、「過激派グループ」の捜査強化を法執行機

ワールド

トランプ政権、入国制限を30カ国以上に拡大へ=国土
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story