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気候変動

「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ

2025年6月23日(月)08時57分
オクラホマ州クレムリン

6月19日、 霧が立ち込めたある5月の朝、オクラホマ州北部の小麦畑では、デニス・ショーンハルスさん(写真)が作物の生育状況を調べるための年1回の巡回調査を行っていた。オクラホマ州クレムリンで6月撮影(2025年 ロイター/Nick Oxford)

霧が立ち込めたある5月の朝、オクラホマ州北部の小麦畑では、デニス・ショーンハルスさん(68)が作物の生育状況を調べるための年1回の巡回調査を行っていた。しかし既に、自身を含めた農家は一部の畑で販売用の小麦の収穫を断念していた。価格が5年ぶりの安値に下落したためだ。

テキサス州からモンタナ州に及ぶ小麦の生産地帯の農家は今年、早々に「損切り」を決断し、小麦を干し草に加工したり、プラウで畑をの土を反転させたり、家畜に開放して放牧地にするといった道を選んだ。ネブラスカ州では、小麦の作付面積が2005年の半分未満に減っている。


 

穀物保険に加入していれば収入を維持できる可能性もあるが、多くの農家は保険金の支払いを当てにするのが最良のビジネスモデルではないと認める。

米国の大平原地帯(グレートプレーンズ)は、有名な愛国歌「アメリカ・ザ・ビューティフル」で「琥珀色の麦の波」と称賛されてきた。この地域の州は、パン製造で好まれる米国産ハード・レッド・ウィンター小麦の大半を生産している。

しかし価格が1ブッシェル当たり5ドル前後に落ち込んだことで、米国の小麦農家は岐路に立っている。多くは損失を被るか、さもなければ小麦を家畜の飼料に回したり作物を廃棄したりするしかない。

カンザス、ネブラスカ、オクラホマ3州の農業従事者とアナリスト10人以上へのインタビューのほか、米農務省データの分析により、小麦の利益は他の作物と比べて大幅に少なくなっていることが明らかになった。

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