最新記事
犯罪

「現代の奴隷」が20万人以上も...東南アジア特殊詐欺、虐待の日々から逃げ出す「唯一の脱出法」とは?

VICTIMS AND PERPETRATORS

2025年4月25日(金)17時09分
イバン・フランチェスキーニ(豪メルボルン大学講師)、リン・リー(ベネチア・カフォスカリ大学博士号候補生)、マーク・ボー(リサーチャー、東南アジア在住)
カンボジア南西部の詐欺拠点とされるビル

カンボジア南西部の詐欺拠点とされるビル ROUN RY

<詐欺拠点にいったん足を踏み入れると暴力や虐待は日常茶飯事。カンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピンで詐欺を強要される「サイバー奴隷」の実態とは?>

カンボジア警察に昨年8月、3人の日本人男性から電話があった。詐欺集団から逃げ出したいので助けてほしいという。

警察が動いた結果、12人の日本人が『救出』された」と、カンボジアの人身売買対策団体の関係者は語る。「12人は犯罪の強制を目的とした人身売買の被害者だと語り、(首都)プノンペンの保護施設に移送された」


そこで事態はおかしな方向に動き出す。「警察に連絡してきた3人は本物の被害者だと思う。他の9人は詐欺師、または詐欺集団の元締めと思われるが、どういうわけか、彼らも一緒に逃げ出した」

施設に到着後、「被害者」のはずの18~22歳の若者少なくとも5人が3人を襲撃。サッカー場に立たせた彼らに向かってボールを蹴り、火の付いたたばこを手や足に押し付けた。

「施設側はこの3人を他の連中から引き離す必要があった」と、この関係者は言った。カンボジア警察は12人を被害者と認定した誤りを認めず、この状況は数週間続いた。10月初め、ようやく12人は詐欺容疑の逮捕状が出ていた日本に送還された。

このエピソードは東南アジアで急成長するオンライン詐欺業界をめぐる悲劇の一部にすぎない。この地域(特にカンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピン)では少なくとも2010年代初頭から、主に中国系犯罪組織が牛耳る小規模な詐欺集団が存在していた。

10年後には数十万人が働く複数の詐欺拠点に集結。そこでは多くの人々が現代の奴隷に近い環境で詐欺行為を強制されている。

展覧会
「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米百貨店コールズ、通期利益見通し引き上げ 株価は一

ワールド

ウクライナ首席補佐官、リヤド訪問 和平道筋でサウジ

ワールド

トランプ政権、学生や報道関係者のビザ有効期間を厳格

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部に2支援拠点追加 制圧後の住
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 7
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 10
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中