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教育DXで変わる通学路の安全対策

通学路の危険を見つけたり、対策を主体的に考えることで、子供たちの安全意識も高まる(写真はイメージです) ferrantraite-iStock
<長野県伊那市の中学で行われたデジタルデバイスを駆使しての「ヒヤリハットグッド・マップ」作成は、交通事故を未然に防ぐ取り組みとして全国に広まることが期待されている>
新年度が始まった。子供たちは期待と不安を胸に登校し、保護者や地域は健やかな成長を願う。一方で、千葉県八街市のような通学路での交通事故が起きないかという心配は尽きない。通学の安全対策の仕組みは古いままの地域も多く、現代に合わせたかたちで体制や仕組みを検討する必要がある。それが2021年のGIGAスクール構想(学校のDX)元年を契機に、ユーザー参加が可能になり、少しずつ変わりつつある。
中学生がまちづくりに参画
長野県伊那市の春富中学校1年生は昨年度、自宅から学校までの危険な場所と楽しい場所、その理由をデジタル端末で入力して意見を集約した。それをもとに解決策を検討して市や県に提案する試みを行い、一緒に対策を講じてもらうよう大人たちを動かした。
この活動が実現した背景には、学校の学び方の変化がある。デジタル端末の活用と自ら考えてグループでプレゼンテーションをするという学習スタイルへの大転換が主な要因だ。
デジタル端末の活用は、文部科学省の方針でパソコンやタブレットを学習用具として活用するGIGAスクール構想の一環だ。新型コロナウイルス感染症の流行により一時は通学できない時期もあったため、学校教育でもデジタルツールが積極的に活用されるようになった。パワーポイントを使った発表、写真や動画を用いた表現、Web会議システム「Zoom」を活用した外部講師の登壇などが日常的に行われるようになってきている。
このようにビジネスの場で行われているような手法が学校教育の現場でも使われており、中学生のまちづくりへの参画が容易になってきている。
伊那市では、このGIGAスクール構想を機に、簡便に通学路の危険箇所や楽しい箇所を集約して見える化するヒヤリハットグッド・マップの作成に乗り出した。春富中学校から新型コロナウイルスの流行によって行事がなくなってしまった生徒たちに何か機会を作ってほしいと申し出があったという。1学年3組あるため、3カ所の危険箇所に対して、自らすぐにとれるアクションも含めた解決策を検討した。
具体的には、「暗いので木を切ってほしい」、「クルマの速度を落としてほしいので看板を作りたい」、「年下の小学生を気遣って、徒歩と自転車の通る所を分けてほしい」などの解決策が挙がってきた。部活が終わると日没後で暗いため、自分たちを(ドライバーに)認識してもらうためのキーホルダーや太陽光で充電できるウォッチのデザイン画まで提示されるなど、柔軟でありながら実現可能なアイデアが提案された。毎日使う通学路だからこその現状分析や問題点の指摘も見事なものであった。
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