<通学が子供の成長に及ぼす影響は決して小さくない。統廃合に伴って新たな通学路や通学手段を検討することは、まちづくりや地域の移動課題を考え直す機会となる>
学校の統廃合が進んでいる。それは地域の移動が変わる転換期でもある。免許返納問題が注目される中、クルマを運転できなくても一生涯にわたって移動に困らない地域をどう作るか──視野を広げて考えたい。
静岡県伊豆市では、3つの中学校を統合し、これまで学校のなかった場所に新校舎が建てられる。文部科学省によると、全国で統合して開校した学校は2019年度に111件、20年度に168件、21年度にも152件にのぼった。そのうち、小学校同士の統合が273件、中学校同士が94件、小学校と中学校の統合が51件だった。
統合によって学校区が広がり、通学時間が延びている子供も多い。そのため、統合後にスクールバスを導入した学校も多く、スクールバスの導入・運行・維持は平均で2915万円の負担になっており、校舎の新増築に次いで多いと報告されている。
子供たちは先輩たちとは違う学校に通うことになる。そのため地域では、開校までに、生徒たちの通学ルート・通学手段を考える必要に迫られる。
この問題について取り上げられるとき、通学手段のことにばかり焦点が当たりがちだ。通学時間が子供の成長にどう関係するのか。まちづくりや地域の移動を確保する観点から考えたとき、通学ルートや通学手段の変更が地域にどのような影響を与えるのか。そういった広い視野が欠けているように感じる。
徒歩や自転車で通学するメリット
子供の成長や地域愛を育むことに通学が果たす役割は大きい。
デンマークのコペンハーゲン大学とオーフス大学の合同研究チームは12年、徒歩や自転車で通学すると授業で集中力が高まるという内容の論文を発表し、話題となった。小学3年生の場合、徒歩や自転車で通学すると、教育を受けた期間が6カ月長い児童に匹敵するほど集中力が増すという。朝食や昼食の有無以上に通学方法の影響が大きいのだ。
スクールバスや家族の送迎よりも、歩いたり自転車に乗ったりして、毎日カラダを動かして通学した方が体力がつくのは自明の理。通学は生きる力を育む時間でもある。地域の四季を感じ、農業・歴史・文化を知る。友人や住民と交流することで地域愛が芽生え、その記憶は生涯にわたって残る。通学は豊かな時間なのだ。
徒歩、自転車での通学はできるかぎり残したい。