コラム

災害対策、事故予防に 気象データの活用がモビリティ分野にもたらすメリット

2022年11月04日(金)13時25分
気象データ

気象データについて「あらゆる業種でビジネスに有効活用できる余地がある」と専門家は言う(写真はイメージです) Petrovich9-iStock

<気象と交通、気象と人の移動は切っても切れない関係にある。気象データを使うことで可能になることとは?>

日本は世界の中でも気候変動の影響を大きく受けている国の一つだという見方がある。

国土交通白書2020によると、日本の国土面積は世界の0.25%。にもかかわらず、地震の発生回数は世界の18.5%を占める。また、世界に約1500あると言われる活火山のおよそ1割が日本にあり、いかに自然災害と隣り合わせの環境であるかが分かる。

大雨や短時間強雨(1時間の降水量が50mm以上)の年間の発生回数を「1976年から85年」と「2010年から19年」で比較すると約1.4倍に増加しているという。

西日本豪雨、全国初の「災害時BRT」からの学び

こうしたことから以前にも増して、災害対応が重要になってきている。公共交通の災害対策として業界で注目された取り組みがある。2018年7月に発生した西日本豪雨の際に活躍した「災害時BRT」だ。

当時、広島市と呉市の約1万8000人の通勤・通学者は移動手段を失った。その際に「災害時BRT」は発案された。

災害時BRTは、一般車両が通行止めとなった高速道路・自動車専用道に路線バスなど指定されたバス車両を通行可能にすることで速達性・定時性を確保する方法だ。まず代替バスを走らせ、速達性を上げるために2車線のうち1車線をバス専用空間にした。

業界で注目された理由は、全国初の取り組みであったのはもちろんのこと、地域で早期に連携し、難しいとされる高速道路本線上でのバスレーンや自動車専用道でのUターンを実現させたためだ。ダイヤが乱れるなか、情報発信を工夫した点も注目された。

「災害時BRT」を命名し、地域のブレーンとして現場で動いた呉工業高等専門学校の神田佑亮教授は、当時を振り返って次のように教訓を述べている。

「西日本豪雨の被害総額は約1000億円と言われる。災害への備えや長期化する被災者の復興生活が注目されているが、発災後の早期復旧の体制づくりや方法にも視野を広げるべきだ。被災すると一社のBCP(事業継続計画)の範囲を超えてくる。交通業界は官民関係の構築が難しいとされるが、災害対策のためには緩やかな連携が不可欠だ」

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story