コラム

朝鮮半島有事の際に、拉致被害者をどう救出するか

2017年10月25日(水)11時00分

さらに言えば、韓国との事前の協議を省略して自衛隊が朝鮮半島内で活動することになると「軍国日本の亡霊が再びやってきた」という感情的な反発を受ける可能性があります。その場合は、日本の世論との間で悪感情の応酬が起きる危険があり、これはそのまま「なし崩し統一」後の韓国と日本の関係悪化という、日本の安全保障上の大きなコストとして跳ね返って来るリスクに直結します。

3つ目は、救出の対象者です。純粋に拉致被害者に限るというのは、少し無理があるように思います。社会的混乱の中での救出ということであれば、例えば日本国籍のない配偶者や子なども同行を許すようにしないと、せっかく危険を冒して活動していても、該当者の理解を得られないこともあり得ます。また、過去に政府の圧力等を受けて、救出を拒む以外のチョイスがなかった人も、今回は改めて救出の対象に加えた方がいいと思います。さらに動乱が深刻である場合には、いわゆる「日本人妻」とその家族など幅広い人々の救出を視野に入れることも考えるべきだと思います。

4つ目は、反対に救出対象者が、北朝鮮における犯罪行為に加担させられていた可能性です。拉致被害者の中には北朝鮮の行ってきたテロ行為等に関して、意に反して協力を強制させられていたケースもあると思われますが、仮に有事から動乱、そして旧体制への断罪に進む場合に、「強いられて加担した」人々まで処罰がされることは回避しなくてはなりません。この点について、関係国の合意、国連等での確認ということも必要です。

そう考えると、拉致被害者の救出作戦というのは、仮に北朝鮮社会が混乱に陥るとして、その中で「人権を侵害されていた人々」を救出する関係国の行動の一つとして、具体的には日米韓中ロの5カ国の協力体制の中で実施する、この姿勢が基本になると思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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