ニュース速報
ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税にフラン高が追い打ち

2025年07月12日(土)13時21分

 7月8日、スイスの代表的な観光地の一つ、ルツェルン。高級腕時計ブランドの店が軒を連ねるここでも、トランプ米大統領の高関税政策の影響が出ている。写真はジュネーブの時計の店舗のディプレー。4月3日撮影(2025年 ロイター/Cecile Mantovani)

Marleen Kaesebier

[ルツェルン(スイス) 8日 ロイター] - スイスの代表的な観光地の一つ、ルツェルン。高級腕時計ブランドの店が軒を連ねるここでも、トランプ米大統領の高関税政策の影響が出ている。米貿易政策を巡る不透明感を受けたスイスフラン高も追い打ちをかける。

ロイターは腕時計販売店舗のマネージャーや販売員十数人に取材をした。彼らは関税を巡る不透明さが重くのしかかっていると語った。

業界は既に中国の需要低迷に直面していた。そこに、米国の貿易政策を巡る不確かさを背景とするスイスフラン高騰だ。ただでさえ安くない腕時計の値段は外国人観光客にとってますます割高になってしまった。

スイスは貿易に大きく依存する。トランプ氏が4月に発表したスイスに対する相互関税率は31%と欧州連合(EU)の20%を大きく上回り、衝撃が走った。

「ウブロ」販売店のマネージャー、ケン・メイ氏は、トランプ関税で「明らかに売れ行きが鈍った」と語った。

トランプ政権はその後関税の上乗せ分の適用を90日間一時停止した。腕時計メーカーは猶予期間中に米国への出荷を急ぎ、同国の輸出は上下に激しく変動した。トランプ氏は7日、関税交渉期限を8月1日に延長した。

2024年の腕時計輸出は260億スイスフラン(約327億9000万ドル)だった。スイス腕時計産業連盟(FH)のデータによると、業界は腕時計の輸出量が2020年のパンデミック以来の低い水準になると見込んでいる。FHのイヴ・ブグマン会長は「他の市場を開拓しなければならない」と語った。

ルツェルンはこの夏、訪れる観光客が明らかに減っている。販売店員によると、訪れる人々はこれまでよりも財布の紐を固くしているという。グレンデル通りはロレックスからパテックフィリップまで数千点の腕時計が販売店に並び、そぞろ歩く人の目を引いている。「パテックフィリップ」の店では、白衣を着た製造職人が顧客向けにあつらえた腕時計を顧客にトレイで運んでくる。こうした店舗で販売される腕時計の価格は一般的に数百スイスフランから50万スイスフランを超える。パテックフィリップはオンラインで約380万スイスフランの腕時計を販売している。

「ブライトリング」店舗マネージャー、マイケル・ハース氏は「われわれは高級ブランド業界にいるので、概して景気が悪くなると、真っ先に節約の対象になる」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中