コラム

混乱回避に成功した米ニューアーク空港と航空行政

2025年05月28日(水)14時40分

航空管制や空港施設のトラブルが続いたニューアーク空港 Eduardo Munoz-REUTERS

<5月初旬には「飛行機に乗るのが怖い」という声も出ていたが>

ニューヨーク都市圏には主要な空港が3つあります。国際線を中心に6つのターミナルと4本の滑走路を持つ巨大空港のJFK(年間利用者数約6300万)、国内線専用のラガーディア(同じく約3350万)の2つはニューヨーク市のクイーンズ区にあります。そしてハドソン川を渡ったニュージャージー州にあるニューアーク空港も3つのターミナルがあり、国内、国際線併せて年間利用者数は4900万近くという大空港です。

このニューアーク空港ですが、4~5月にかけて大きなトラブルが重なり、ほぼ毎日のように全国ニュースが取り上げる事態となっていました。まず、4月28日には約90秒に渡って管制機能が停止するという事故が発生しました。これと前後して、老朽化した管制機器の不具合、管制官の離職が進行しました。また一部滑走路が改良工事のために閉鎖されるという事態も重なりました。

その結果、この時期には「メルトダウン」などと呼ばれる事態となり、発着ダイヤが大きく乱れることとなりました。この空港は、前身のコンチネンタル航空の時代から、ユナイテッド航空が東海岸のハブ空港と位置づけており、毎日300便以上が発着しますが、その多くが影響を受けていました。


大幅減便を受け入れたユナイテッド航空

航空機の特性として、離陸時よりも着陸時には管制との密なコミュニケーションが必要なことから、特に到着便については「なかなか着陸許可が出ない」という状態が恒常化していました。国内線の場合、ニューアークの着陸許可の見込みが立たないので出発地で待たされる便も多くなっていました。5月9日には管制塔におけるレーダー画面が、90秒に渡ってダウンするという事故も起きていました。

アメリカの場合、5月の最終月曜日はメモリアルデー(戦没者慰霊の日)の祝日で、土日を加えた三連休になります。この連休が夏の行楽シーズンの幕開けとされており、国際線、国内線ともに乗客が一気に増えるのです。このままでは、この多客期を迎えるのは難しいということから、連邦政府、所轄の州政府を含めた、管制当局とユナイテッド航空の協議が持たれました。

その結果として、ユナイテッドは大幅減便を受け入れるとともに、航空事業者側のコントロールセンターと管制の連絡を密にするなど、管制当局に全面的に協力することになりました。便数については、およそ12%を削減するというのですから、企業業績にも影響を与えかねない規模です。ですが、安全運航には代えられないということでした。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は

ワールド

韓国、米のAI半導体関税の影響は限定的 今後の展開
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 9
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 10
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story