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混乱回避に成功した米ニューアーク空港と航空行政

航空管制や空港施設のトラブルが続いたニューアーク空港 Eduardo Munoz-REUTERS
<5月初旬には「飛行機に乗るのが怖い」という声も出ていたが>
ニューヨーク都市圏には主要な空港が3つあります。国際線を中心に6つのターミナルと4本の滑走路を持つ巨大空港のJFK(年間利用者数約6300万)、国内線専用のラガーディア(同じく約3350万)の2つはニューヨーク市のクイーンズ区にあります。そしてハドソン川を渡ったニュージャージー州にあるニューアーク空港も3つのターミナルがあり、国内、国際線併せて年間利用者数は4900万近くという大空港です。
このニューアーク空港ですが、4~5月にかけて大きなトラブルが重なり、ほぼ毎日のように全国ニュースが取り上げる事態となっていました。まず、4月28日には約90秒に渡って管制機能が停止するという事故が発生しました。これと前後して、老朽化した管制機器の不具合、管制官の離職が進行しました。また一部滑走路が改良工事のために閉鎖されるという事態も重なりました。
その結果、この時期には「メルトダウン」などと呼ばれる事態となり、発着ダイヤが大きく乱れることとなりました。この空港は、前身のコンチネンタル航空の時代から、ユナイテッド航空が東海岸のハブ空港と位置づけており、毎日300便以上が発着しますが、その多くが影響を受けていました。
大幅減便を受け入れたユナイテッド航空
航空機の特性として、離陸時よりも着陸時には管制との密なコミュニケーションが必要なことから、特に到着便については「なかなか着陸許可が出ない」という状態が恒常化していました。国内線の場合、ニューアークの着陸許可の見込みが立たないので出発地で待たされる便も多くなっていました。5月9日には管制塔におけるレーダー画面が、90秒に渡ってダウンするという事故も起きていました。
アメリカの場合、5月の最終月曜日はメモリアルデー(戦没者慰霊の日)の祝日で、土日を加えた三連休になります。この連休が夏の行楽シーズンの幕開けとされており、国際線、国内線ともに乗客が一気に増えるのです。このままでは、この多客期を迎えるのは難しいということから、連邦政府、所轄の州政府を含めた、管制当局とユナイテッド航空の協議が持たれました。
その結果として、ユナイテッドは大幅減便を受け入れるとともに、航空事業者側のコントロールセンターと管制の連絡を密にするなど、管制当局に全面的に協力することになりました。便数については、およそ12%を削減するというのですから、企業業績にも影響を与えかねない規模です。ですが、安全運航には代えられないということでした。
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