コラム

都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐藤沙織里とは何者か?

2025年06月24日(火)13時45分
さとうさおり

ReHacQの選挙番組に出演した佐藤氏

<参院選の前哨戦と言われた東京都議選が終わった。自民党の大幅議席減や、国民民主党と参政党の議席獲得といった既成政党のニュースの陰で、地殻変動が起きていた。千代田区選挙区での「ユーチューバー」の当選である>

東京都議選が終わった。自民党は過去最低となる21議席(追加公認3人を含む)に沈む大敗を喫し、都民ファーストが31議席を維持して都議会第1党の座を奪還した。

といっても両党は、公明党(19議席)とあわせて小池百合子知事を支持する「知事与党」を構成しており、知事与党全体として議会過半数(64議席)を押さえている状況に変わりはない。小池知事の権力基盤が実質的に強化されたに等しい結果を見ると、都議選の真の勝者は、都庁プロジェクションマッピングの高額批判を歯牙にもかけず、水道基本料金4カ月無償化といった物価高対策を矢継ぎ早に打ち出して都民の心をつかんでいた小池知事本人ということになるのかもしれない。

自民や公明が失った議席に食い込んできたのが新興勢力だ。国民民主は、参院選候補者擁立等におけるトラブルが支持率急落を招いていたが、ゼロから9議席を獲得。参政党は太田・世田谷・練馬の3区で議席を獲得した。両者ともにSNS選挙戦略に長けていることが共通点である。

その点で注目されるのは千代田区の選挙結果だ。

千代田区(定数1)では、無所属の佐藤沙織里(さとうさおり)候補が現職の平慶翔氏(都民ファースト)を246票差で破り当選を果たした。自民党新人の林則行・元区議は1098票及ばず、かつて都議会のドンと呼ばれた故内田茂・都議会議長の女婿内田直之・元区議も5465票差をつけられた。知事の威光も組織票も閨閥(けいばつ)も跳ね返した佐藤沙織里氏とは何者か。

プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル・イラン停戦、持続性は不透明とロシア外相

ビジネス

EXCLUSIVE-世界の中銀、準備資産で金・ユー

ワールド

イスラエル、イランへの攻撃指示 「停戦違反」主張 

ビジネス

中東情勢、火種残らないか注視必要=経団連会長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 6
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story