コラム

EVなど成長産業で日本に足りないのは、技術力より社会実装力

2021年09月15日(水)11時00分
藤野英人

「お金のまなびば!」より

<ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトが進んでいるが、世界有数の自動車大国であるはずの日本は後れを取っている。それはなぜか。ファンドマネージャーの藤野英人氏によれば、日本は「技術以外」に問題がある>

ひふみ投信シリーズのファンドマネージャーとして知られる藤野英人氏と、お金や投資、経済について学んでいくYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

今回取り上げる動画は、「今後成長する業界は?成長のカギはわたしたち自身【1000人アンケート⑥】」

株式投資にはさまざまな手法があるが、将来的に大きく成長する銘柄を見つけることはひとつの醍醐味だ。

1000人に取ったというアンケート調査によると、「今後成長すると思う業界」には1位から順に「人工知能関連」、「再生可能エネルギー」、「バイオテクノロジー」が並んだ。

「この3つは未来をリアルに語っている」と藤野氏。ほかに、藤野氏は民間企業の参入により活性化する「宇宙関連」、人間の身体能力や認知能力を拡張する「拡張人体」なども注目のトレンドとして挙げた。

4位にランクインしたのは電気自動車(EV)関連。2020年に50万台を販売したアメリカのテスラ社を筆頭に成長著しく、その市場規模は2030年には3475万6000台に達すると予測されている。

「EVが広まることはほぼ確実。5〜10年すれば、技術的にも安全なものができるだろう。しかし、EVが普及するために大事なことは、実は技術面以外にある」

ここで、藤野氏はひとつの例を出した。自動車が登場し始めた時代は、同時に馬車が走っていた時代でもある。藤野氏によると、当時は馬が驚いてしまわないように「自動車は馬よりも早く走ってはいけない」という法律があったそうだ。

しかし、自動車の数が馬車の数を上回るにつれ、そうした法律はなくなっていった。代わりに、道路が整備されたり、交通事故や排気ガスによる大気汚染などを防ぐ法律ができたりといった新しい社会ルールが増えたというわけだ。

「社会実装、つまり法律や人々の習慣が変わらないと物事はうまくいかない。技術よりも社会がどのように新しいものを受け入れ、ルールづくりをするかがとても大切だ」

特に日本の場合、新しいものが入ってくるとまずは反発が生じる傾向が強い。このことが、世界から後れを取っている大きな原因なのだという。

fujino20210915-1000-ev-2.jpg

「お金のまなびば!」より

「自分には関係ない」と思っていると社会は変化しない

かつて「ものづくり大国」と呼ばれた日本も、今ではアメリカや中国に大きく引き離されたと危機感を煽る声は多い。しかし、日本の技術力自体は世界に決して引けを取らない、と藤野氏は言う。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界EV販売は年内1700万台に、石油需要はさらに

ビジネス

米3月新築住宅販売、8.8%増の69万3000戸 

ビジネス

円が対ユーロで16年ぶり安値、対ドルでも介入ライン

ワールド

米国は強力な加盟国、大統領選の結果問わず=NATO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story