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欧州連合がGAFAを厳格に規制する法案を発表──世界のデジタル経済の行方を左右する
グーグルとファイスブックの反応
法案の発表を受けて、米インターネット大手グーグルは、特定の企業をターゲットにしていると法案を批判した。「我々は、今後数日間にわたって欧州委員会が提案した内容を慎重に検討していく。しかし、我々は彼らが特定の一握りの企業をターゲットにしていることを懸念している」と、グーグルで政府関連および公共政策担当副社長を務めるカラン・バティアは述べた。
しかし、フェイスブックの対応は、以外にもグーグルとは異なっていた。法案が 「正しい軌道に乗っている」と声明を出し、より和解的な態度のように見えた。「我々はまた、技術革新を促進するのに役立つルールをサポートしている。競争を可能にし、消費者を保護し、これらのルールが私たちに適用されなければならないことを認識している」と、フェイスブックの広報担当者は言った。
ビッグテックに取り組む規制当局
欧米の規制当局は、テック系大手企業のビジネスやユーザーのデータ・プライバシーの取り扱いに対する懸念を強めており、特に潜在的なライバルを排除するために他社を買収する企業が増えていることを懸念している。
その代表例としては、フェイスブックによるメッセージングサービスWhatsAppやソーシャルメディア大手Instagramの買収が挙げられる。グーグルによるYouTubeとGPSナビゲーターのWazeの買収に関しても、規制当局は警鐘を鳴らしてきた。
2020年12月9日、米連邦取引委員会(FTC)と48州が、フェイスブックを相手取り、独占禁止法違反の訴訟を起こした。FTCはまた、フェイスブックが買収したInstagramとWhatsAppの売却を強制する別の訴訟も起こしている。さらにSNSは、現状ではフェイクニュースやヘイトスピーチに対する責任が希薄であるとし、プラットフォーマーをこれまで保護してきた通信品位法の改正も議論されている。
一方、EUの新規制に反対する企業は、より多くの規制は、国の雇用を犠牲にし、EUユーザーのサイトへのアクセスがブロックされる可能性があり、インターネット大手がヨーロッパから離れてしまう可能性があると警告する。
ベルリンの政治家たちは、2018年に施行されたGDPR(一般データ保護規則)の成立を後押ししたことで知られる。しかし、ドイツ経済省のデジタルサービス部門の責任者であるアーミン・ユングブルスは、新しいルールがヨーロッパの中小企業、特にアプリ開発企業を犠牲にして施行されるべきではないと考えている。彼らの多くは、サービスを提供するために大きなプラットフォームに依存しているからだ。
「特にヨーロッパでは、アプリ開発者などの中小企業は、過度の義務や管理上の負担にさらされるべきではない」とユングブルスは述べる。ベルリンでは、この強力な法案がもたらす波及力が、中小企業やスタートアップの減速につながるとの指摘もある。
法律の制定はいつになるのか?
欧州委員会が法案を提示したことで、次はEU議会や加盟国で審議されることになる。EU加盟国は、草案について話し合い、独自の立場を明確にし、変更を提案することができる。法案の規模と多岐にわたる関連性のため、法案の成立には多くの時間がかかるだろう。規則が2022年以前に施行されることは不可能である。
デジタルサービス法とデジタルマーケット法の準備が整うまでには、2024年までかかることも考えられる。当然、GAFAからの反発も予測され、EU議会は強烈なロビー活動の舞台となるだろう。EU法の新時代を確立することになる新しい規則と、世界のデジタル経済の行方を左右する議論は始まったばかりである。
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