コラム

「ポケモンGO」日本リリースはインバウンド活性化にもなる

2016年07月21日(木)17時40分

 そのインパクトは非常に大きく、ビジネスとしての可能性も大きいと思います。ですが、このARというカルチャーについて言えば、日本ではまだ根付いていません。これを育てていくには、政府の注意喚起のように利用者に配慮を求めることに加えて、「使わない人」つまり利用者以外の人々への理解を広めることも必要だと思います。

 その際の問題として、3点指摘したいと思います。

 1つは「歩きスマホ」問題です。このゲームではグーグルの地図情報とGPSを使い、現実の地図と同じような地形を画面上に表示して、そこにポケモンがいたり、「ポケストップ」や「ジム」といった拠点があったりします。ですからゲームのプレイ中は、スマホの画面を見ながら歩きまわることになります。

 この行動は、プレイヤーにとっては「地図」に従って実際の地形を意識して動いているのだし、周囲への注意は払っているという自覚があると思います。また、実際にポケモンのいる場所に来ると、地図ではなくスマホ背面のメインカメラがリアルタイムで撮影した「目の前の風景」の映像の中にポケモンが出てきますから、プレイヤーとしては画面を通じて「ちゃんと前を見ている」という自覚が強まります。

 ですが、こうした一連の動作は、周囲から見れば「違法な歩きスマホ」だという理解をされる可能性があります。「歩きスマホに見えてしまう」ことについては利用者側での対策には限界があります。ですから、この点について「使わない人」の理解を促すことと、トラブルの件数を抑制する工夫が必要と思います。

【参考記事】韓国で唯一ポケモンGOがプレイできる町に観光ブーム

 2点目は、とにかくポケモンのいる「現場」などでは背面カメラを使って、リアルな世界との融合が図られるわけですが、これも周囲からすれば他に人がいるのに写真や動画を勝手に撮影しているという誤解を受ける可能性があります。この点も、理解を広めてトラブルの発生を減らす努力は必要でしょう。

 3点目は、記念碑や博物館など「公共の場所」が「ポケストップ」に指定されることが多いことです。公共の場所であれば、一般の人が接近することに抵抗はないだろうという共通理解でそのように設定されているのでしょうが、この点で日本のカルチャーは少々違っています。本来の目的以外の人が施設等に来ることへの抵抗が出てくる可能性があります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 

ワールド

和平望まないなら特別作戦の目標追求、プーチン氏がウ

ワールド

カナダ首相、対ウクライナ25億ドル追加支援発表 ゼ

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story