コラム

パワハラが起こる3つの原因 日本企業は変われるか

2019年06月05日(水)11時45分

夜間行進、登山、名刺獲得競争を強要される新入社員

2つ目は、組織が持つ企業文化や風土に起因するケースだ。その典型が共通体験。社員の多くが同じ経験をしている場合、新入社員や若手社員など、まだ組織になじんでいない人にそれを強要してしまう恐れがある。

例えば、新入社員研修や幹部研修で、夜中に40キロ歩いたり、富士山に登ったり、駅前で歌ったり、道行く人から名刺を100枚集めたりと、さまざまな体験をさせられる。社員旅行や年末年始の飲み会の出し物を強要したり、仕事面でも企画100本ノックと称して一晩で100案を考えさせるといったこともあるはずだ。

心理学的に言えば、組織の構成員が同じ体験をすると、組織としての一体感が増す。その場合の共通体験は、難易度が高いほど効果がある。それを乗り越えた人たちには、強烈な仲間意識が芽生えるのだ。

苦難的な共通体験は、未経験の人にはイジメでしかない

ゆえに筆者は、共通体験を全て廃止すべきとまで言っているわけではない。焦点にしているのは、ギャップである。それを乗り越えた人たちにとっては、逆に心の支えにさえなっている場合があるが、組織になじみの薄い人にとっては、大いに違和感を覚え、中にはパワハラと受け止める人もいるということだ。

このようなケースのパワハラを解決する方法は2つしかない。自社の中にあるちょっと過激な共通体験を全て洗い出し、採用時に徹底的に説明し、合意を得て、自社の価値観を理解できる人だけを採用するか、もしくは、多くの人が受け入れる企業文化に変えていくかだ。

同一性が企業の強みだった時代には、こうした共通体験は一体化のための重要な登竜門だった。しかし現在は、考え方だけでなく、国籍を含めて多様性が求められる時代である。自社の中にある理不尽と受け止められかねない慣習を見直す時期に来ている。

上司本人が必死であるがゆえに、メンバーを責め立てるケース

3つ目は、人事制度などの仕組みに起因するケース。上司本人が必死であるがゆえに起こるような事例である。

例えば、真面目な50代の部長が、メンバーを罵倒する、無理難題と思われることも強要する。人事制度上、成果が厳しく求められ、成果を出せないと自分が昇格昇進できないばかりか、降格や左遷もありえる状況などに起こりやすい。

このタイプの人は、自分の部下を自分の手足のように考えてしまうのだ。何としても成功したい。こうすれば上手くいくはずだ。この通りに考えよ。指示の通りに動け。なぜそれができないのだ。早く言われた通りにしろ......。

成果を出すことに必死で、自分の仕事のやり方を部下にも押し付けてしまう。そしてイメージ通りにいかないと苛立ち、その苛立ちをぶつけるように人前で叱責を繰り返す。個人技で仕事ができたタイプの管理職に多い。

このようなケースのパワハラを減らすためには、その上司を心理的に楽にしてあげることと、チームで成果を出す方法をきちんと学ばせることが必要だ。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米12月貿易赤字703億ドルに拡大、25年モノの赤

ビジネス

FRB調査巡るハセット氏の批判、独立性に対する新た

ワールド

EXCLUSIVE-欧州の情報機関トップ、年内のウ

ワールド

トランプ氏、国連への資金援助を表明 「強化と存続支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 3
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 4
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 7
    カンボジア詐欺工場に「人身売買」されたアフリカ人…
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    アイスホッケーの試合中に「銃撃事件」が発生...「混…
  • 10
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 7
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story