コラム

パワハラが起こる3つの原因 日本企業は変われるか

2019年06月05日(水)11時45分

パワハラを行う人の過去の経験やキャラクターに起因するケース

1つ目は、パワハラを行う個人の過去の経験やキャラクター(性格)に起因するケース。これは、無意識に攻撃性を発揮してしまうので、なかなか厄介だ。

私が実際に遭遇した事例を紹介しよう。仕事のできる50代の男性がいた。業績目標も真っ先に達成し、常に工夫を繰り返し、仕事の質も高い。業務的には、模範のような人だ。

しかし、その部署に新入社員を配属すると、なぜか辞めてしまう。それも、複数人だ。調べてみると、パワハラまがいのことが起きていた。その50代男性が、新入社員に対して、ひどく叱責する。人格を否定する。そして周囲の人に、あいつはダメだと吹聴する。被害者が辞めたくなる気持ちも分かる。

その原因を探ると、男性が幼少の頃、親に厳しく育てられていたことが分かった。何事もナンバーワンでなければダメ、完璧でないとダメだと躾られ、そうでないと叱責を受け、食事を抜かれることすらあったようだ。特に父親は厳格で、世間的にも評価の高い会社の役職者だった。そうして本人は、ナンバーワンにこだわり、努力することが当たり前になった。しかし、常に父親に対するコンプレックスを持っていたようだ。

配属された新人の仕事の仕方が甘いと、純粋に腹が立つのだ。自分がストイックにナンバーワンであることや完璧さを追求しているのに、いい加減で努力もしないことが許せないのだ。そして、自分が受けたことと同じように、叱責し、人格を否定し、周囲に対してもその人を否定してしまう。パワハラをしている本人にとって、罪の意識がないのが特徴だ。

自分の存在感を確認するためにパワハラを繰り返す人も

似た事例では、40代の女性が、過度に自己主張し、自分の存在感を見せつけるためにメンバーを叱責しているケースがあった。背景を探ると、家の中では旦那さんに頭が上がらず、常に指示される役回りで、反論できない立場だった。

つまり、家庭の中で、自己肯定感が下がり続けていたのだ。その反動として、会社で自分の存在感や権威を確認していたのである。

このようなパワハラを防ぐ方法としては、自分の言動の特徴に気づいてもらい、相手がどう思うのかを考えてもらう。大事なのは、無意識だった行動を意識化させること。今まで行っていた叱責や罵倒を、やるかやらないか、また、代わりにどんな反応をするか。その時々の状況に合わせて判断できるようにしていき、行動を変えてもらうことから始めるとよい。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン首都で自爆攻撃、12人死亡 北西部の軍学

ビジネス

独ZEW景気期待指数、11月は予想外に低下 現況は

ビジネス

グリーン英中銀委員、賃金減速を歓迎 来年の賃金交渉

ビジネス

中国の対欧輸出増、米関税より内需低迷が主因 ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story