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「不平等な特権待遇」国会議員の文通費に知られざる歴史あり(2)~GHQ勧告の否定から始まった
現在の「通信費」の源流
「最も安価で効果的に、日本国民を教育する手段」という文言はいささか刺激的であるが、GHQによる「民主化政策」の視点が反映されているものと言える。
この文書以前のGHQ側文書にはこのような記述が確認されていないことからすると、この「新憲法下の議会の諸問題」(9月3日勧告草案)こそが、その後国会法38条で規定されることになる「通信費」(現行の文書通信交通滞在費)の源流ということになろう。
「新憲法下の議会の諸問題」はその後、日本議会政治研究の権威とされていたハロルド・キグリー(ミネソタ大学教授)の修正を踏まえて9月10日、「新憲法下の国会の主要な障害」としてGHQ民政局内で承認され、GHQ側による国会法制定の基本線となる。この2つの文書における通信費の記述は基本的に同一であるが、後者では「国会の尊厳と権威を高めるため」に国会法制定が必要であるという趣旨が明示されている。
ジャスティン・ウィリアムズは新しい国会法を構想するにあたって、アメリカの立法府再編法やトーマス・ジェファーソンの「米議会手引」(Jefferson's Manual)等を参考にしているが、それらに通信費に関する実務的記載がある訳ではない。GHQ民政局でウィリアムズの上司であったガイ・スウォープがもともとペンシルバニア州選出の下院議員(民主党)であったことからすると、米連邦議会での実務が参照された可能性が高いだろう。
いずれにせよウィリアムズが「新憲法下の議会の諸問題」(9月3日勧告草案)で提唱した「無料郵便特権付与」の構想には3つのポイントがあった。
1つは、文書の郵便に関わる料金を「無料化」するという内容であり、何らかの手当を「給付」するというものではなかったこと。
次に、国会に関わる文書や記録を国民に知らせる「最も安価で効率的な手段」である郵便の料金を無料化するという「特権」を国会議員に付与するものであったこと。
最後に、国会の印刷物その他公的文書類を対象とする「無料郵便の特権」が、「国会の尊厳と権威を高めるため」に認められるべきであると明確に位置づけられていたことである。
GHQ内部ではこのように「郵便料金を無料とする特権付与」が構想されていた。だが日本側はどこ吹く風で、10月31日に日本側が作成した国会法案の「第一次草案」に通信費に関する規定はなかった。
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