コラム

中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?

2025年10月11日(土)18時00分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)
中国

©2025 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

<中国人は便利な「調理済み食品」を嫌う。「何を入れられているかわからない」という他人への不信感と、「料理はとにかく温かいものがいい」というかたくなな食へのこだわりゆえだ>

中国語の「預制菜(ユィジーツァイ)」は「あらかじめ作られた料理」という意味の新語。食材を事前に加工し、容器にパックした調理済みあるいは半調理済みの料理のことだ。忙しさに追われる現代中国人向けの便利な食品として政府の政策にも後押しされ、力強い成長を示している。最新の報告書によると、2023年の市場規模は5165億元(約10兆7000億円)。26年には1兆720億元(約22兆円)と予測される。

しかし政府がいかに政策で後押ししても、国民の間で市民権を得ることができない。「豚や犬の食い物」「低級な工業食品」といったレッテルを貼られ、根強い反発を招いている。


例えば23年9月、江西省贛州市の小学校や公立幼稚園で、共同調理所で作った共通給食が導入された。預制菜ではないかと疑った親たちがメディアに通報。「新鮮さに欠ける」「添加物の使用による健康被害も懸念される」といった彼らの主張がネットで拡散され、全国的な話題になった。子供のために仕事を辞め、手作り弁当を届ける親も出現した。

なぜ中国人の親たちはこんなに神経質なのか。中国社会で多発する学校食中毒事件や食の安全への心配が原因だろう。伝統的な調理法では食材や調理方法が一目瞭然なのに対し、預制菜の生産過程は消費者にとって原料の調達から加工、保存、輸送に至るまでが不透明なブラックボックスに映る。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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