森保ジャパンには、得意にしている「勝ちパターン」がある。前半は力をセーブして失点を最小限に抑え、後半に三笘薫といったジョーカーの投入をトリガーに攻守のギアを一気に上げるという戦い方だ。

この型が生まれたのが2022年W杯カタール大会初戦のドイツ戦だ。日本は前半に猛攻撃を受けながらも1失点にとどめ、後半に突然フォーメーションを4バックから3バックにチェンジ。激しくプレスをかけてドイツを混乱に陥れ、三笘、堂安律、南野拓実といったアタッカーを次々に投入して逆転勝利を収めた。

第3戦のスペイン戦もほぼ同じ展開となる。前半に1失点したが後半アタマから三笘と堂安を投入し、猛烈なハイプレスによって逆転した。カタールの地で歴史的勝利をもたらした「後半勝負」の戦い方を、選手たちは「戦術カタール」と呼ぶ。

もはや日本にとって勝てない国はない。25年10月、東京で行われたブラジルとの親善試合で再び「戦術カタール」を発動する。日本代表は前半に2失点したが、後半にハイプレスを仕掛けて3点を決め、史上初めてブラジルに勝利した。

北中米大会・日本代表予想フォーメーション【3-4-2-1】(筆者予想)
北中米大会・日本代表予想フォーメーション【3-4-2-1】(筆者予想) ILLUSTRATION BY ANGELA KSEN/SHUTTERSTOCK (FIELD)

なぜ「戦術カタール」は強豪相手に機能するのか? そこには日本特有の粘り強さが関係している。

多くの国ではテクニックがあるうまい選手は、泥くさい仕事をしたがらない傾向がある。守備で無駄に走るのを嫌がるのだ。例えばブラジルには「ピアノを弾く選手」と「ピアノを運ぶ選手」という言葉がある。天才に演奏を任せ、他の人間はサポートに徹するという考え方だ。タレントを特別扱いする文化がある。

だが、日本は違う。三笘や堂安のようなうまい選手も泥仕事をいとわず、事前に約束事を決めたら全員が完遂する。

25年1月にNHK・BSで放送された全日本柔道男子・鈴木桂治監督との対談で森保一監督はこう語った。

「タフに粘り強く、諦めないで最後まで戦い抜けることが、日本人の良さだと思います。カタールW杯でドイツとスペインに勝てた要因はまさに後半勝負なんですよ。前半はできるだけ相手のパワーを受け止め、後半に相手が落ちてきたところでこちらは集中力を上げて勝ち切る。マラソン型で持久戦に持ち込んだほうが勝つ確率が上がると考えています」

仮に他国が「戦術カタール」をまねしても、前半と後半の「振れ幅」は日本ほど大きくならないだろう。全員が粘り強くプランを実行できる日本だからこそ、後半に突然全く別のチームになれるのだ。

newsweekjp_20260325101537.png逆転監督 森保一
 
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【note限定公開記事】【W杯】森保ジャパンの武器「戦術カタール」の正体と、その先にある進化

 

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