<毎年4月は中国人が墓参りで祖先の霊と対話する「清明節」の季節。祖先があの世でカネに困らないよう冥銭を焼く習慣があるが、今年は別のものが流行しているという>
「清明節を迎え、『AI紙扎全家桶(AI紙細工フルセット)』がひそかに人気を呼んでいる。ディープシークなど最先端のAIモデルがモチーフの紙細工のお供え物が登場。単品は35元(約815円)、フルセットは209元(約4800円)で販売されている」(江蘇省の揚子晩報)
清明節(今年は4月5日)は中国人の墓参りの時期である。日本のお盆と似た伝統的な祭日だが、先祖の霊が家に戻ってくると考える日本人と違い、中国では墓に出向いて、あの世で使える冥銭(紙のお金)を焼く習慣がある。これは単なる迷信ではなく、中国人の独特な「死生観」や「家族観」を象徴している。
中国の伝統的な死生観では、あの世(陰間)は現世(陽間)と地続きの社会だと考えられている。死後も現世と同じように衣食住にお金がかかり、役人がいて「人間関係」もあるため、先祖はあの世でも豊かに暮らせるよう、子孫が毎年冥銭を送り続ける義務があると考えられる。
冥銭をたくさんもらって豊かになった先祖は、お礼として現世の子孫に福をもたらし、一族の繁栄を守る──これが中国人の「先祖信仰」であり、中国式の家族の絆である。極めて現実的で物質的な、互恵関係に基づく祖先崇拝だ。
その背景には、数千年続く社会構造と価値観、儒教の影響がある。儒教が説く親孝行は、この世だけではなく、死後も現世と同じ生活環境を整えることを子孫の義務とする。このため、抽象的な祈りより食べ物やお金など目に見える形で供養することこそ誠実、とされる文化が根付いている。
また、中国の長い歴史は戦乱や飢饉、激しい社会変動の繰り返しだった。その中で最も頼りになるのは、国家や政府ではなく、血縁の家族だけだという意識が強い。