コラム

「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは

2025年10月14日(火)19時18分
デンマークで生まれたフレキシキュリティー

Collection Maykova/Shutterstock

<今年は「イノベーション駆動型の成長理論」を構築した3人がノーベル経済学賞を受賞。この成長の中で必要となるのが、フレキシキュリティーと呼ばれる制度だ>

[ロンドン発]スウェーデン王立科学アカデミーは10月13日、米ノースウエスタン大学のジョエル・モキイア教授と、仏コレージュ・ド・フランスのフィリップ・アギヨン教授、米ブラウン大学のピーター・ホーウィット教授の3人にノーベル経済学賞を授与すると発表した。

モキイア教授は「技術進歩による持続的成長の前提条件(なぜ成長は始まったか)」を明らかにし、アギヨン、ホーウィット両教授は「創造的破壊を通じた持続的成長の理論(なぜ成長が続くか)」を構築したことが評価された。

3人の研究をつなぐと「イノベーション駆動型の成長理論」が完結する。

しかし「イノベーションは勝者と敗者を生み出す。これは企業だけでなく、労働者にも当てはまる。高成長には多くの創造的破壊が伴い、より多くの職が消滅し失業が増える恐れがある」(王立科学アカデミー)という。

職を保護するのではなく労働者を保護する

「したがって人々を支援し、より生産的な職場に移ることを容易にすることが重要だ。フレキシキュリティーとよばれる制度を通じて、職を保護するのではなく労働者を保護することが適切な解決策となるかもしれない」と王立科学アカデミーは指摘する。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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