<トランプ政権の「巧妙な」通商戦略は、なぜEUに通用しなかったのか>
トランプ関税が世界中に吹き荒れたのは2025年の4月。もう1年以上も前のことだ。
日本とは数カ月後に合意に至ったし、どの国もとっくに交渉は終わって新たな関税が始まっている…と思うのは間違いだ。欧州連合(EU)では、昨年に日本の4日後にターンベリー合意を結んだものの、欧州議会が納得せずに紛糾。ようやく交渉のケリがつき、この7月からやっと正式に発効となった。1年近くもめていたのだった。
EUは、日本や他の国々には存在しない、羨ましいような域内法を定めることに成功した。どんなものだろうか。
2029年には終わりを迎えられる
一番の成果は、この関税合意は双方によって更新されない限り2029年3月31日に失効するというものだろう。日没条項(サンセット条項)と呼ばれる。
ドナルド・トランプ米大統領の任期は2029年1月20日までだ。トランプ政権の終焉と共に、「悪夢」を終わらせようと思えばできる道筋が担保されている。
トランプ政権が日本も含め各国と結んだ合意は、実質的に「政治合意」にすぎない。そのため、次の米大統領が大統領令によって一方的に破棄や修正しようと思えば、制度上は可能なのだ。
もし新大統領が友好的なら、日本や他の国々は再交渉をお願いする余地はあるかもしれない(もっとも、相手が受け入れるかどうかは分からないが)。逆に非友好的な人物なら、またしてもアメリカの都合に振り回されるかもしれない。
予測できない新たな「嵐」に対抗する条項
EUが法制化したのはこれだけではない。停止条項とセーフガード条項も盛り込まれている。
「停止条項」とは、もし米大統領が再び合意を覆すような措置(関税の引き上げなど)を一方的に取ろうとしたら、EU側も合意に基づく義務を即座に停止できるというものだ。トランプ大統領に対する強い警戒心がつくらせた「盾」である。