<トランプ政権が国際刑事裁判所の赤根所長に資産凍結や渡航禁止などの制裁を科した。第一次大戦以来、規範に基づく国際秩序づくりを目指してきたアメリカが、なぜその体現組織であるICCを解体し、所長に制裁を加えるのか>

米政府が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長に対する制裁を発表した。資産凍結、渡航禁止、米企業によるサービス提供の制限を含む制裁は、アメリカの右派が長年追求してきた政策目標に沿っている。その目標とは、国家主権を制限するICCのような多国間組織を解体することだ。

そもそもアメリカは1917年に第1次大戦に参戦して世界に君臨する大国となって以来、規範に基づく国際秩序、つまり国際関係で法が最も高い権威を持つ体制を築くことを一貫して目指してきた。

第2次大戦後には国連、IMF、世界銀行、GATT(関税貿易一般協定)を軸にそのような世界秩序の強化をさらに推し進めた。これにより歴史上初めて弱肉強食の国際システムが明確に否定された。

この「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」と呼ばれる世界秩序は80年間にわたり、世界に平和をもたらし、教育水準と繁栄、個人の権利を向上させてきた。ICCはアメリカの意向に反して設立されたが、パックス・アメリカーナ的な理念に沿ってつくられた機関と言える。

しかし、世界の国々の合意により定めた法によって統治される世界を実現するという構想には、3つの大きな障害があった。

第1に、国家は自国の利益を追求することで生じるコストが上回らない限り、常に自国の利益を追求しようとする。第2に、あらゆる統治体制には合法的な武力行使を独占する「警察権力」が不可欠だが、第2次大戦後の規範に基づくシステムはそうした仕組みを持っていない。第3に、アメリカの国内では、規範に基づく秩序を支持する考え方だけでなく、国際法による主権の制限を容認できないという考え方も根強い。

トランプの「お友達」に逮捕状を出したICC
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