<秋の中間選挙で負けて弾劾に追い込まれないため、そして任期終了後に様々な問題の責任追及を逃れるため、トランプの政策はさらに先鋭化している>
アメリカのトランプ政権の動向を見る際に、2つの別の問題が動いているという視点を持つと、見えてくる部分があるように思います。それは2026年問題と、2028年問題です。まず2026年、つまり今年は中間選挙の年です。普通は2期目の大統領の中間選挙というのは、それまでの6年間の結果を問う信任投票という性格があります。
民意がその大統領の政策に不満がなければ、この中間選挙では与党にそれなりに票が入ります。反対に、大きな不満があれば野党を勝たせ、野党はその勢いで2年後の大統領選で政権交代を狙うわけです。ですが、今回の中間選挙は異なります。大統領は絶対に負けるわけにはいかないという非常に強い危機感をもって臨んでいます。
それは、この2期目の政策をかなり極端に振っていることで、議会の中に政権への強い不満を持つ勢力があるからです。民主党議員のほぼ全員に加えて、共和党の穏健派の議員も政権には不満を抱いています。ですから、トランプ大統領としては与党・共和党が勝つだけでは安心できず、自分の思想に近いいわゆる「MAGA派」の候補にすげ替えなくては、という切迫感を持っています。
仮に自分に対する反対派が議会で優勢になれば、すぐにでも弾劾されるリスクに直面する……切迫感というのはそういうことです。これに対抗するには予備選では現職を落として自派候補にスイッチし、本選では穏健派候補より難しいにもかかわらず無党派票も巻き込んで民主党の候補を打倒しなくてはいけません。政権は非常な危機感でこの2026年問題に臨んでいます。
オンタリオ湖を「アメリカ湖」に改名?
例えば、ここ数日、カナダとの通商戦争が突然再開されました。50%の関税をかけると脅したかと思うと、カナダ側が対抗措置を実施する構えを見せました。すると、大統領は五大湖の1つであるオンタリオ湖を「アメリカ湖」に改名するなどという無理難題を言い出しています。一見すると荒唐無稽な言動です。事実、全く常識からは逸脱した行動だと言えます。
ですが、政権としては大真面目なのです。大真面目でカナダとの同盟を壊そうというのではありません。そうではなくて、五大湖地方のミシガン州、ウィスコンシン州などで民主党が左派候補を立てて中間選挙を戦っており、それなりの勢いが出ている、何としても政権としてはこれに対抗する必要があるわけです。
オンタリオ湖の改名というのは、勿論、無党派中間層には響きません。そんなことは百も承知でしょう。元々この政権の政策は極端だとか、インフレの責任は現政権にもあると思っている層は放置するしかありません。これに対抗するには、通常は政治に関心がないが、「オンタリオ湖がアメリカ湖になったら面白い」と思うようなレベルの政治リテラシーの層に訴求するのが有効だと思っているのです。通常は時事問題に関心を示さず、従って投票もしない層を投票所に引っ張ってくるには「このぐらいの話題性をぶつけないとダメだ」と思っている……そう考えれば、良し悪しは別として、そこには合理性が見いだせるのです。
ただ、ここへ来てカナダにおける反米感情が加速したことで、打撃を受けるのはアメリカの観光業だと言われています。ニューヨークとフロリダへの影響が大きいと言われていますが、なかでもカリブ海周辺の場合はカナダ人がフロリダ州ではなく、カリブ諸国に殺到していて市場が激変しているというニュースもあります。そうなると、意外な場所で中間選挙に影響が出てくるかもしれません。