<「悪い円高」「良い円高」も「悪い円安」「良い円安」も考えられるが、当面の円安進行を抑える効果はありそう>

円安が続く中で、5月の連休中に政府日銀は数回にわたる大規模介入を行い、そのことを公表しました。5月のタイミングでは160円台への突入防止であったわけですが、介入の効果により1ドル156円台を巡る攻防へと、一旦は移動しました。

けれども、その後の為替市場でズルズルと円は値を下げ、1ドル163~164円という水準まで下落、ここで7月31日より、日米が協調介入するに至りました。この事実は双方から公表されており、アメリカ側ではベッセント財務長官だけでなく、トランプ大統領自身からも円安の行き過ぎを是正するべきという趣旨のコメントが出ています。

今回の協調介入に関しては、ベッセント財務長官が、5月11日から12日にかけて来日し、片山財務相などと会談した際に、方法論の検討がされていたのだと思います。また、片山財務相は9カ月前から相談していたとしていますが、だとすれば片山氏としては、このような局面に追い込まれた場合に備えて、「伝家の宝刀」に他ならない協調介入の道を探っていたのでしょう。

今回の措置の最大の問題は、これがまさに「伝家の宝刀」だということです。日米当局が公表し、トランプ氏の肉声コメントまで出してもらったのですから、これ以上の強力な措置はありません。ですから、何としても成功させなければなりません。その一方で、今後の展開は予断を許しません。従って、予想しうる様々なシナリオを想定して備えておく必要を感じます。

「良い円高」と「悪い円高」

1つ目のシナリオは、「悪い円高」です。市場の思惑が逆回転して円が極端に高くなる、この場合は物価高を抑える効果は出てくると思いますが、問題も大きくなります。

・多国籍企業における全世界合算の円建て収益がしぼんでしまう。その結果、賃上げがストップするなどのマイナス効果から、国内に不況が広がる。

・NISAなどでの外貨建やオルカン投資が逆ザヤ、また多国籍企業を中心とした日本株の円建て株価は崩壊。

・インバウンド消費が暗転し、観光業やサービス業が一転して苦境に。場合によっては地域経済に甚大な影響も。

という厳しい副作用があります。また「悪い円高」が進む場合には、

・日本円の最後の輝きをチャンスと捉えた海外マネーが利益確定に走って、不動産と株の大規模な叩き売りが発生。

という事態も想定されます。

高市政権としては、当然このようなシナリオには警戒をしていると思います。その上で狙っているのは、「良い円高」という2番目のシナリオです。

・企業業績や株価には大きな問題を生じず、海外からの投資マネーに関する叩き売りも起きない。

・物価高には救いの動きとなり、場合によっては減税も給付も先送りできるほどのインフレ抑制になる。

・仮に減税や給付を本当に実施するにしても、世界市場から信認を受けて進めているという体裁になる。

ということで、可能であればこの2番目、つまり「良い円高」が実現することに賭けて、今回の協調介入が行われたと見ることができます。

どこまでが「耐えられる円安」なのか?
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