※あのニュースはどんな業界に影響するのか、あの企業の株価が動いたのはなぜか……。連載「ニュースで読み解く!注目株」では、株式市場を知り尽くした執筆陣が、いま注目すべき銘柄や相場の展開を解説します。
東京海上ホールディングス<8766>は10月1日付で、1株を15株にする株式分割を実施します。これにより、現在は80万円以上が必要な最低投資額は、一気に5万円台まで下がることになります。なぜ、これほど思い切った分割を行うのでしょうか?
それは単に「株を買いやすくする」ためだけではありません。膨らむ個人マネーを取り込み、長期株主を増やすための株主戦略と見ることができます。背景には、NISAの普及と、東京証券取引所が進める少額投資改革があります。
大胆な施策の背後にある個人マネーの存在
そもそも、企業はなぜ株式分割をするのでしょうか。
株式分割は文字どおり、1株を複数に分けることを言います。例えば「1:5」の分割なら、それまでの1株が5株になり、投資家が保有している株数は5倍になる一方、(理論上の)株価は5分の1になります。会社の利益や時価総額、株主が保有する価値そのものが増えるわけではありません。
それでも企業が分割をするのは、投資のハードルを下げて入り口を広げるためです。
現在の日本株は、100株単位での売買が基本です。仮に株価が8000円なら、最低でも80万円が必要ということです。個人投資家が資金100万円で株式投資を始めようとした場合、1銘柄だけでその大半を使ってしまい、分散投資が難しくなります。
最低投資額を下げれば、これまで手が届かなかった個人投資家も参加しやすくなり、売買の流動性が高まる効果も期待できるのです。
■新NISAで個人マネーが無視できない存在に
ここ数年、今回の東京海上HDのような、大型の株式分割に動く企業が増えています。NTT<9432>の25分割や、三菱重工業<7011>や富士通<6702>の10分割など、大型株による10倍以上の分割が相次いでいます。
背景にあるのが個人投資家の急拡大です。2024年に新NISAがスタートし、2025年末にはNISA口座数が2821万口座、累計買付額は71兆円に達しました。いまや個人マネーは、企業にとっても無視できない一大勢力となっているのです。
東京海上HDの「15分割」の狙い
東京証券取引所も投資単位の引き下げを後押ししています。「50万円未満」を望ましい投資単位とし、7月には、最低投資額が50万円以上の約270社に対し、改めて株式分割の検討を要請しました。一方、個人投資家への調査では「10万円程度」が理想的との回答が最も多くなっています。
東京海上HDが「15分割」を選択した狙いも、ここにあります。