※本記事は『JBIC Today』2026年7月号「エネルギー安全保障の新たな選択肢 バイオ燃料の現在地」特集の1記事です。
ブラジル・インドネシアが先行、再評価されるバイオ燃料

「3年前にシンガポールで開催されたエネルギー関連の会議に参加した際、誰もが『これからは再生可能エネルギーと水素の時代が来る』と口をそろえて言っていました。しかし、現在、その見方が変わっています」
国際協力銀行(JBIC)常務執行役員で資源ファイナンス部門長の天野辰之がそう語る背景として、水素の製造・輸送コストが想定ほど下がっていないという現実がある。脱炭素化を進めながらも、当面は化石燃料と一定期間共存せざるを得ないという認識が強まっている。
さらに近年、ロシア・ウクライナや中東の情勢の不安定化を受け、エネルギー供給網の脆弱性が改めて浮き彫りになった。資源価格の高騰や供給混乱が各国経済に与える影響も大きく、エネルギー政策は環境面に限った問題ではなく、国家の競争力や安全保障に直結する。
「そのため近年は、脱炭素の推進に加え、特定地域への依存を減らし、エネルギー供給源を多様化するエネルギー安全保障の重要性も高まっています」と天野は強調する。
そうした中、現在、再評価されているのがバイオ燃料だ。植物や廃食油など生物由来の資源からつくられる燃料で、既存インフラを活用しながらCO₂排出量を抑えられる点が特徴とされる。
実はバイオ燃料の歴史は古い。蒸気機関よりも経済的なエンジンとして、約130年前に発明されたディーゼルエンジンに最初に社会実装された燃料はピーナッツ由来の油だった。バイオ燃料は新しい技術ではなく、むしろ化石燃料が主流になる以前から存在していたエネルギー源だ。
実際、バイオ燃料の原料が豊富な国々では、活用が進んでいる。
ブラジルではサトウキビやトウモロコシなどを由来とするバイオエタノールが普及しており、自動車用燃料として、ガソリンにバイオエタノールを22~35%混合することが義務付けられ、100%バイオエタノール対応の自動車もある。インドネシアではパーム油由来のバイオ燃料政策が積極的に推進されている。
