ネット通販の拡大や消費行動の変化で、「もはやオワコン」と見られていた百貨店が、いま息を吹き返しています。国内の高額消費に加え、インバウンド需要もその市場を支え、全国の百貨店売上高は今年に入って前年実績を上回る月が続いています。
なかでも注目したいのが、三越伊勢丹ホールディングス<3099>です。8月に発表した今期の第1四半期決算では、総額売上高が前年同期比6.5%増(3207億円)だったのに対し、営業利益は20.6%増(189億円)と大きな伸びを示し、第1四半期では過去最高を更新しました。
売上高以上のペースで利益が伸びている──これは、客が戻ってきただけでなく、稼ぐ仕組みそのものが変わっていることを意味します。三越伊勢丹HDの好業績から、百貨店復活の背景を探ります。
「個客業」へ転換する三越伊勢丹HD
三越伊勢丹HDの好業績を支えているのが、国内の富裕層を中心とした高額消費です。特に宝飾品や時計などが好調です。金や貴金属の価格が上昇するなか、「さらに値上がりする前に買っておこう」という購買心理や、資産分散を目的とした実物資産への需要も追い風となっています。
こうした需要を取り込みながら、同社は値引きに頼らないプロパー販売も徹底。第1四半期の三越伊勢丹単体では、総額売上高は前年同期比7.8%増、営業利益は23.0%増となりました。
■昔ながらの「外商」を現代型ビジネスへ
富裕層をつかむうえで武器になるのが、百貨店が昔から得意としてきた「外商」です。従来の外商は、担当者が長年の付き合いから顧客の好みや生活スタイル、家族構成まで把握し、「このお客様ならこれを」と提案する、担当者個人の経験や営業力に支えられたビジネスでした。
三越伊勢丹では、この強みを個人技で終わらせず、顧客データやAI、外商担当者、バイヤー、店頭スタッフなどを組み合わせ、組織力へと変えつつあります。
さらに、この仕組みを富裕層だけにとどめていません。同社が掲げる「個客業」では、カードやアプリで顧客を識別し、購買履歴や嗜好に応じた提案を行います。
かつては優秀な外商担当者の頭の中にあった「このお客様は何を好むのか」という情報をデータ化して会社の資産に変える。そして、外商で培った「一人ひとりを知って売る」という商売を、より幅広い顧客へ広げようとしているのです。
これが同社のいう「館業から個客業へ」という転換の意味です。