<世界の民泊マーケットでは大人数が宿泊できる物件は「パーティー用」>

訪日外国人を年間4000万人にするという政府の方針は既に達成されて、今は6000万人を目指すフェーズに入っています。例えば、羽田空港への鉄道新線建設だとか、成田空港のターミナル改築と鉄道輸送力増強などの施策は、訪日客受け入れのキャパを増やすためと言えます。

訪日客を受け入れるには空港アクセスだけでなく、宿泊施設のインフラ増強も必要になってきます。4000万とか6000万という数字を実現するには、ホテルや旅館の増設だけでは足りないことから、2018年には民泊新法が施行されました。従来は旅館業法によって禁止されていた民泊を、年間180日を上限として都道府県への届け出で可能にするものです。

ところが、コロナ禍を経て9年が経過した現在、この民泊に対する日本の国内の評価は高くありません。それどころかトラブルが頻発しており、都道府県の中には営業日数の上限を180日ではなく90日とか60日に短縮する検討を始めたところもあります。なかには「0日」つまり、その県では民泊禁止に戻すべきという議論がされているケースも報じられています。

どうしてトラブルが起きるのかというと、民泊という概念に誤解があるからです。民泊は飲食を提供しないので日本的に言えば「素泊まり」だという理解になります。これがトラブルの元凶です。日本の場合、「素泊まり」というと民宿やビジネスホテルなどで、夕食は外食またはコンビニ飯、部屋も「寝るだけ」の簡素な作りで、宿泊客は単身とか家族2~4人というイメージになります。そんなイメージからは、騒音とか大量のゴミという問題は想像しがたいのです。

静かに「寝るだけ」とはならない

ところが、海外の旅行者にとっては、民泊については全く違う意識を持っています。まず、民泊の多くは複数の寝室を備えた物件です。そして、マーケティングのターゲットは大家族またはグループ旅行になります。例えば寝室が3室ある物件なら6人とか7人といった人数になります。特に日本というマーケットの場合は、三世代旅行よりポケモン世代による友人グループの旅行がメインです。

その場合は、静かに「寝るだけ」ということにはなりません。飲食物を持ち込んでパーティーを繰り広げるというのが定番です。複数のベッドルームに加えて、共同で使用するダイニングやリビングがあるということになると、ホテルの場合は豪華なスイートルームになります。業者としては、民泊だとその半分、いや4分の1ぐらいの価格で全員が泊まれて楽しめるというのをウリにしています。

ということは、複数の寝室とリビングのある民泊は、少なくとも4〜5人以上のグループを対象とした「パーティー」をするのが前提になっているのです。と言いますか、そのようなカテゴリのビジネスであり、単に寝る場所ではないのです。その証拠に、大手の民泊業者の場合は、各物件に「モノポリー」などのボードゲームやトランプなどの遊具は、必ず備品として用意しています。というと、日本的には旅先でやることがなくて寝る前に静かに遊ぶというイメージですが、海外客のカルチャーからすると、ワイワイ騒いでゲームをやるということになります(近年、大手民泊業者はパーティー禁止などの抑止方針を打ち出している)。

もう1つの問題は飲食です。ここまで説明したように欧米の民泊ビジネスでは、複数の寝室を持つ物件は多人数のグループ旅行をターゲットとしており、その場合に飲食は外で済ませるのではなく、ケータリングやテイクアウトが主となります。また、多くの場合はアルコールも伴います。したがって、物件の側でもグラス類、皿などのテーブルウェア、フォーク・ナイフなどのカトラリーは、ふんだんに用意するようになっています。空っぽの大型の冷蔵庫も定番です。

トラブルの原因は認識のミスマッチ
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