コラム

新型コロナウイルス、世界は「ドライブスルー検査」活用の流れ

2020年03月23日(月)15時55分

米ワシントン州シアトルの大学病院の駐車場にできたドライブスルー検査所(3月17日) Brian Snyder-REUTERS

<接触を回避しながら教科書を配布するなど、検査以外の活用法も>

新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、世界各国政府は感染拡大を防ぐために検査の拡大、入国制限の強化、スポーツ大会やエンターテインメント興行の中止や延期、新学期の延期、外出の禁止、商店とレストランの営業禁止など多様な政策を実施している。

対策は国ごとに少し異なるものの、共通している点は症状を早期発見し重症化を防ぐために、PCR検査を拡大していることではないかと思う。先日、筆者は韓国では検査時間を節約し、待機中の交差感染懸念を和らげられるために「ドライブスルー検査」が実施されていることについて紹介した。「ドライブスルー検査」は、検査を受けたい人が屋外に設置されている「選別診療所」を訪ねて、車に乗ったまま受ける検査方法である。受付から問診表の作成、医療スタッフの面談、体温の測定、鼻と口からの検体採取までの全プロセスにかかる時間は10分程度で、すべての検査は車に乗った状態で行われる。現在、韓国ではドライブスルー検査を実施している選別診療所が約70カ所あり、検査で採取された検体は全国の実験室(118カ所、専門家は約1,200人)に送られ、感染有無が確認される。検査結果は1~2日後に事前に登録した個人の電話やメールに送られる。

「難民」解消の特効薬

筆者は先日、日本の「検査難民」問題を解決する方法として日本でもドライブスルー検査の導入を検討することを提案した。その提案に対しては賛否両論があったものの、反対の意見が多い印象であった。ドライブスルー検査に反対する主な理由としては、「日本は重症患者の治療に重点を置いているので、感染拡大を重視している韓国とは政策の目的が違う」、「検査を拡大し、感染者数が急増すると医療崩壊を招く」、「検査を増やすと公務員などの過労死が増加する」、「日本の都会には車を持っている人が少ないので、対策にならない」、「治療薬がない状態で検査だけ増やすのは意味がない」などが挙げられた。

上記の意見は全てが一理あるといえるだろう。但し、世界的にはドライブスルー検査に対する需要が広がっているようだ。例えば、ドイツのヘッセン州のマールブルク地域やグロースゲーラウ地域では3月からドライブスルー検査所を設置し、検査を実施している。また、ニューヨーク市も3月14日からドライブスルー検査を導入した。このような現象は日本でも起きている。新潟市保健所は3月1日から検査を受ける人が車に乗ったまま検体を採取するドライブスルー形式を始めた。名古屋市も近いうちにドライブスルー方式での検体採取を実施すると発表した状態である。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米とウクライナ、和平案を「更新・改良」 協議継続へ

ビジネス

FRBの金融政策は適切、12月利下げに慎重=ボスト

ビジネス

米経済全体の景気後退リスクない、政府閉鎖で110億

ワールド

アングル:労災被害者の韓国大統領、産業現場での事故
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story