コラム

新型コロナウイルス、世界は「ドライブスルー検査」活用の流れ

2020年03月23日(月)15時55分

当初、ドライブスルー検査方式に否定的だった日本政府の考えにも少し変化が起きている。加藤厚生労働大臣は、3月17日に開かれた衆議院厚生労働委員会で、「私の地元でも、疑いのある人が待合室に入られると、患者さんが感染するおそれがあるということで、車に乗ったまま駐車場で待っていただき、車まで、お医者さんが行って、診断してくれるケースもある」と、感染の防止に十分に配慮して対応するのであれば、車に乗ったまま受けられるドライブスルー方式で検査を行っても問題はないという見解を示した。

検査以外にも活用

以上のような動きを見ると、今後日本でもドライブスルー検査はより広がるのではないかと思われる。さらに、韓国ではドライブスルーが検査以外にも活用されており、注目を集めている。韓国政府は、新型コロナウイルスによる感染拡大を防ぐために幼稚園や小中高の新学期開始を3月9日から4月6日に延期した。その結果、教科書を受け取っていない新入生が、教科書がないまま自宅で自習をしないとならないという問題が発生した。そこで、慶尚北道浦項市のある中学校では、対面接触による感染拡大の問題を回避するためにドライブスルー方式を利用して新入生に教科書を渡すことにした。新入生の保護者などは、3月18日から20日までの間に、学校が指定した場所に車で来ると、車から降りずに教科書を受けとれる。また、ソウル市城東区の区立図書館では3月10日からドライブスルー方式を利用して貸出サービスを提供している。

株式会社サーベイリサーチセンターが全国47都道府県にお住まいの20歳以上の男⼥ 4,700人を対象に2020年3月6日から9日の間に実施したインターネット調査によると、⽇本国内にウイルスが広がる不安は、中国政府が武漢市を封鎖した1月23日時点の59.6%から3月の調査時点には92.1%に上昇した。また、自分自⾝への感染に対する不安は、同期間に18.5%から75.3%に大きく上昇した。不安度(「とても不安を感じている」と「やや不安を感じる」の合計)を感じる項目としては、「いつまで続くのか、見通しが分からないこと」(85.1%)、「効果的な治療薬やワクチンなどがないこと」(83.1%)、「ウイルスが目に見えないものであること」(78.4%)が上位3位を占めた。一方、「検査(PCR検査)を受けたくても受けられないこと」に対する不安度も66%で高い割合を占めた。この結果から国民の多くが検査を希望していることがうかがえる。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story