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日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人

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2025年12月2日(火)19時04分
ニューズウィーク日本版ウェブ広告制作チーム
富山市桝田酒造店の5代目当主を務める桝田隆一郎氏

満寿泉の銘柄で知られる富山市東岩瀬の酒蔵、桝田酒造店の5代目当主を務める桝田隆一郎氏。スコットランドの伝統衣装であるキルトを着用し、キーパー・オブ・ザ・クエイヒの就任式に臨んだ

伝統的な製法を守りながら世界を見据えた酒造りを追求

富山駅から富山地方鉄道富山港線で北に向かって約20分。江戸時代に北前船の寄港地として栄え、明治期に建てられた木造家屋が多く残る東岩瀬地区が広がる。北前船廻船問屋 森家(国指定重要文化財)や旧馬場家住宅(国登録有形文化財)が保存され、リノベーションによって商店やレストラン、アーティストの工房やギャラリーとして再生した建物が軒を連ねる。

そんなまちづくりの中心的存在となったのが、1893年にこの地で創業した造り酒屋、桝田酒造店の5代目当主を務める桝田隆一郎氏である。満寿泉を看板銘柄とし、伝統を守りながら新しい価値を生み出す酒造りに挑戦し続けてきた。

その桝田氏が2025年10月に、スコッチウイスキー業界で最も権威のある協会、ザ・キーパーズ・オブ・ザ・クエイヒのメンバーとなるキーパー・オブ・ザ・クエイヒに任命。日本酒の酒造業者としては史上初の快挙となった。

ザ・キーパーズ・オブ・ザ・クエイヒとは、スコッチウイスキーの生産や販売、普及などに貢献した人たちを称えるために設立された協会で、メンバーは大きく分けてキーパーと上位の称号であるマスターがある。キーパーの候補者は現職のキーパーまたはマスターによる推薦を受け、さらに厳格な選考プロセスによって、毎年限られた人数のみが任命される。

これまでに100カ国以上から3000人以上がこの栄誉を受け、さらにキーパーとして10年以上にわたって顕著な活動を行うなどの厳しい条件を満たした者がマスター・オブ・ザ・クエイヒに認められる。新しくキーパーに任命されると、名誉あるコミュニティへの参加が許されると共に、スコッチウイスキーの価値と権威あるイメージを広く知らしめる活動などが義務付けられる。

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クエイヒとはスコットランドで使われてきた酒杯のこと。両手で持つため、武器を持たないことを示す友好の証にもなった

常識にとらわれない試みが両者に斬新な価値を吹き込む

桝田氏とスコッチウイスキーとの本格的な関わりが始まったのは2018年まで遡る。この前年に、元プロサッカー選手の中田英寿氏が、ブレンデッドスコッチウイスキーの代表格であるシーバスリーガルが主催する名誉賞「シーバスリーガル18年 ゴールドシグネチャー・アワード」に選出。日本酒をはじめとした日本文化の振興事業に取り組む中田氏が、桝田氏をイノベーションパートナーとして紹介したことから、満寿泉とシーバスリーガルとのコラボレーションプロジェクトがスタートした。

これは日本酒とスコッチウイスキーの伝統技術を融合させ、新たな価値を創造することを目的とした取り組みで、第一弾として誕生したのが満寿泉の「リンク8」だった。

この日本酒は数種類の異なる酒米、さらに数種類の酵母で発酵した原酒を、スコッチウイスキーの熟成に18年以上使用したオーク樽を中心に数種類の樽で10カ月間熟成させブレンド。特別な香りと味わいを生み出す熟成の手段はもちろんのこと、シーバスリーガルのお家芸であるブレンディングの技術を取り入れた革新的な試みだった。

そして、第二弾として2024年に完成したのが「シーバスリーガル 匠リザーブ12年」である。「リンク8」で使用した樽をスコットランドへ送り返し、この日本酒カスク(樽)で12年以上熟成したシーバスリーガルの一部をフィニッシュさせたのが最大の特徴だ。特有のスムースさはそのままに、日本酒に由来する新鮮で繊細な味わいの影響が感じられる完璧なバランスに仕上がった。

残念ながら、日本酒カスクの使用はスコッチウイスキー協会に認められておらず、イギリスではスピリット・ドリンク(イギリス以外ではウイスキー)に分類。しかし、既存の枠組みにとらわれない挑戦は、満寿泉とシーバスリーガルのコラボレーションならではといえる。

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12年以上熟成した原酒の一部を、満寿泉を寝かせたオーク樽でフィニッシュさせた「シーバスリーガル 匠リザーブ 12 年」

スコッチウイスキー業界で新たな歴史を切り拓く日本人

この取り組みが始まって以来、桝田氏は積極的にメディアに登場。日本原産のミズナラ樽で仕上げた「シーバスリーガル ミズナラ12年」や「シーバスリーガル18年ミズナラ カスク フィニッシュ」、そして「リンク8」に関する情報を発信し続けた。

また、持ち前の人脈を生かして、ミシュラン星付きレストランのシェフをはじめ、業界に影響力を持つ人たちにもアピール。加えて、自らフードマッチングイベントを主催するなど、新しい体験創出に尽力した。

極めつきは、地元の東岩瀬地区に特別な招待客のみが体験できる「シーバス・バー」をオープンさせたことだろう。

ここは「アート・オブ・ブレンディング」をテーマに、アート作品や季節ごとに変わる演出を通じて、創造的なブランド体験を提供する空間。消費者にとってのシーバスリーガルの聖地として、ブランドの価値向上に類まれなる貢献を果たした。

2018年から始まった桝田氏のチャレンジは、スコッチウイスキーの歴史に新たな一章を刻むべく革新性に満ち溢れ、キーパー・オブ・ザ・クエイヒの任命へと結実した。

「日本酒業界から見ると、スコッチウイスキーが築いてきた全体的な姿と取り組みは、私たちに多くのインスピレーションを与えてくれます。匠リザーブは、日本酒とスコッチウイスキーが共同でつくり上げたイノベーティブなイベントとして歴史に刻まれました。この機会をいただいたスコッチウイスキー、特にシーバスリーガルの寛大さとインスピレーションに心から感謝し、敬意を表します」と桝田氏は語った。

また同じタイミングで、長らくキーパーとして活動してきた渡邊一人氏が、日本人初のマスター・オブ・ザ・クエイヒに任命された。

渡邊氏は、日本でシーバスリーガルを扱うペルノ・リカール・ジャパンの執行役員 営業統括本部長を務める人物。シーバスリーガルと日本原産のミズナラ樽とのコラボレーションを実現させたことなど、さまざまな功績が表彰の対象となった。桝田氏と共に、今後も日本人ならではの感性やこだわりが、スコッチウイスキー業界に多大なる影響を与えていくであろう。

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桝田氏(左)のキーパー任命と共に、ペルノ・リカール・ジャパンの渡邊一人氏(右)は日本人で初めてのマスターに任命

問い合わせ先/ペルノ・リカール・ジャパン株式会社

https://www.chivas.com/ja-jp/

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