腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
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HEMファーマのチ・ヨセフCEO
<腸内マイクロバイオームの解析技術「PMAS」と日本アムウェイとの協業で、健康づくりに革命をもたらそうとする韓国HEMファーマのラボを取材した>
腸内環境を知ることで、「未来の健康」を予測できる
「腸内環境を知ることのメリットは、自分の『未来の健康』を予測できることです。どんな病気にかかるかわからない、というのが人々の不安の根源ですが、腸内環境を知ることでリスクを把握し、未来をより良い方向へ変えられる可能性があります」
こう語るのは、HEMファーマのチ・ヨセフCEO。同社は韓国を拠点に、腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)に特化したヘルスケアを手がけるバイオベンチャー企業だ。
人間の腸内には約千種、約百兆個の細菌が存在するとされ、微生物同士の生態系(マイクロバイオーム)を形成している。バランスの取れたマイクロバイオームは、人体に有益な代謝物質であるポストバイオティクス(短鎖脂肪酸、抗菌ペプチド、ビタミン、セロトニンなど)を作り出すなどさまざまな役割を果たす。その影響は腸内にとどまらず、全身の健康や病気にも影響を与えていると考えられている。

「腸内マイクロバイオームは、私たちの消化、免疫、代謝、脳神経系にまで深く関わっており、健康維持や疾患予防の鍵を握る存在と言えます。以前は人間の遺伝子だけが機能を担っていると考えられていましたが、実際は微生物の遺伝子のほうが圧倒的に多くの働きをしています。つまり、多様な微生物を持つということは、より多くの遺伝子を体内に保有していることに等しいのです」
近年、ここに着目した研究が世界中で進む。マイクロバイオームの機能を解析することで、病気の発症メカニズム解明や予防・治療法の開発、ヘルスケアへの貢献が期待されているのだ。「腸内マイクロバイオームのバランスが取れていることが重要であり、それによって腸内でつくられるポストバイオティクスのバランスも整います。ポイントは『多様性』と『調和』です。多様性とは、腸内に存在する微生物全体のバリエーションを指します。私たちは40以上の病院と共同研究を進めていますが、多くの病気はこのバランスが崩れたときに発症することがわかっています。例えば抗生物質の多用やインスタント食品の摂取などはバランスを崩す原因となります。そうした場合はプロバイオティクスを補って整えることが重要です」
HEMファーマの強みは、腸内マイクロバイオームのシミュレーション技術である独⾃の特許技術「PMAS(Personalized Pharmaceutical Meta-Analysis Screening、特許第7301220号)」を持つところだ。PMASでは、少量の便サンプルから腸内細菌を培養し、その代謝物質を解析することで、人それぞれ千差万別な腸内環境を体外で「再現」することによって、その人に合わせる最適な腸内マイクロバイオームソリューションを提案する。「善玉菌だけでなく、さまざまな微生物が共存している状態が理想で、これが人の健康を支えています。この状態を保つ、あるいは近づけるために必要な、健康寿命の延伸につながる生活習慣のアドバイスを、PMASを介して提供することができます」


日本アムウェイとの協業で、グローバル展開にも弾みを
チは、生命科学の博士号を取得後、15年以上マイクロバイオームの研究に従事。その経験から「この分野は人々の未来を変える」と確信し、HEMファーマを設立した。「かつては、『腸内環境を変えるには他人の便を摂取するしかない』と言われたこともありましたが、適切な菌株を与えることで個人ごとにマイクロバイオームを変えられることを発見し、そこから本格的に研究が始まりました」
そんなマイクロバイオーム分析やサービスを通じて人々の健康的な暮らしを支えるという戦略のもと、HEMファーマが2016年から戦略的提携を進めてきたのが、世界100以上の国と地域で事業を展開するアムウェイだ。アムウェイの支援を受け、HEMファーマは韓国市場において、10万人分を超える世界最大級のマイクロバイオームデータベースを構築済み(2025年9月末時点)。2024年11月にはKOSDAQ市場への上場を果たすなど、急成長を遂げている。
2025年からは日本アムウェイとの本格的な協業も開始し、日本国内でもユーザーデータの迅速な収集やフィードバックの体系化を目指し始めたところだ。日本人のマイクロバイオームデータを蓄積・分析することで、韓国のデータとの比較も可能となる。ビッグデータの活用によって、PMASはより多様な人種やライフスタイルに対応したグローバルモデルの構築へと進化していきそうだ。
チは言う。「アムウェイはグローバルな顧客基盤を持つ世界的リーダーであり、私たちにとって最も重要なパートナーです。今年、日本法人を設立し、国内でもアムウェイと共に世界最大級のマイクロバイオーム・データバンク構築に本格着手できることを大変嬉しく思います」

日本アムウェイのイリーナ・メンシコヴァ社長も、協業の狙いをこう話す。「約60万組を超える日本の顧客基盤に支えられ、腸の健康を含む幅広いウェルネス事業を展開してきました。今回の協業は、その基盤をさらに強化し、世界最大級のマイクロバイオーム・データベース構築につながる大きな一歩。革新的なPMAS技術とアムウェイのネットワークの融合で、精度の高いパーソナライズド・ヘルスケアを実現し、人々の暮らしをより豊かにしていければと考えています」
一連の協業を通じて、HEMファーマは技術革新を一層加速し、アムウェイはこの先進技術を活用した製品・サービスの展開を目指していく。世界有数の長寿国である日本にとっては、特に健康寿命の延伸という社会課題の解決にも期待したいところだ。

チ・ヨセフ(Yosep Ji)
HEMファーマCEO
韓東グローバル大学にて生命科学の博士号取得後、15年以上にわたりマイクロバイオーム研究に従事。2016年にHEMファーマをヴィルヘルム・ホルツァプフェル教授と創業し、同年アムウェイとの戦略的提携を開始。24年にKOSDAQ上場を果たしている。
●問い合わせ先/日本アムウェイ合同会社
https://www.amway.co.jp
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