コラム

韓国は新型肺炎を機に中国依存を脱却すべきだ

2020年02月07日(金)09時50分

新型肺炎の震源地、中国の武漢から避難した韓国人をソウルの仁川国際空港に迎えたバス(1月31日) Heo Ran-REUTERS

<中国を中心とした新型コロナウイルスの流行は、米中貿易摩擦の煽りで経済不振に陥っていた韓国にとってまさに寝耳に水だった。また同じことの繰り返しだ>

流行は7~8月まで続く?

中国湖北省の武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎(以下、新型肺炎)の感染者数が増え続けている。中国の保健当局、国家衛生健康委員会によると、中国本土の感染者は、2月5日の時点で2万4324人に増え、累積死亡者数は491人に達した。日本にも4日現在23人目の感染が確認されるなど新型肺炎の感染は中国のみならず世界各地に広がっている。

世界保健機関(WHO)は、新型肺炎の感染が世界各地に広がっている現状を受け、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern、PHEIC)」を宣言した。これは、今後パンデミック(病気の世界的な流行)を防ぐためには、国際的に対応する必要があることを意味する。専門家は収束までに数カ月間を要すると指摘しており、4月や5月くらいにピークを迎え、7月や8月くらいまでは続く可能性があると予想している。

二重のショック

新型肺炎の感染拡大は世界経済にマイナスの影響を与えることが確かである。事態がさらに長期化すると世界の工場と呼ばれている中国からの部品や素材の調達がつまずき、各国の生産活動が中断される可能性も高い。

特に、中国経済への貿易依存度が高い韓国経済が受ける影響は大きいだろう。昨年、韓国経済は米中貿易戦争の長期化の影響などを受け、輸出が減少し、年間経済成長率(実質)は2.0%に留まった。今年も米中貿易摩擦が続くと、韓国経済の回復は厳しいと予想されていた。しかしながら、1月15日にアメリカと中国が、貿易戦争の緊張緩和を目的とした合意文書に署名したことにより、韓国国内では景気底打ちへの期待感が高まっていた。このような状況の中で中国を震源地とした新型肺炎の拡大は韓国経済にとって「寝耳に水」である。

休業が続出

中国政府は感染拡大を防ぐために1月30日までであった春節の連休を2月2日までに延長した。さらに、上海市、広東省などの地方政府は今月9日まで企業活動の停止や在宅勤務を求める措置を実施している。このような措置は、これらの地域に立地している韓国企業の生産及び販売活動にも影響を与えている。

中国国内に約1,800店舗を展開している大手の化粧品メーカー「アモーレパシフィック」は、武漢市での営業活動を暫定的に中断し、中国現地法人の休業期間を今月の9日まで延長した。

また、中国で生産されている部品や素材を使用する韓国国内の生産活動にも狂いが生じている。中国製部品の在庫が底をついた中堅メーカーの双竜自動車は、部品を供給する企業の中国工場が9日まで稼働中止を延長したので、中国からの部品供給ができないと判断し、今月の4日から12日までに韓国の平沢(ピョンテク)工場の稼働を停止することを決めた。現代自動車の労使も4日に工場運営委員会を開き、7日から蔚山、全州、牙山の韓国国内3カ所にある全工場の稼働を停止し、11日までに臨時休業に入ることに合意した。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所客員研究員、日本女子大学人間社会学部・大学院人間社会研究科非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シカゴへの州兵派遣計画に抗議活動 市民数千人が行進

ワールド

北朝鮮の金総書記、特別列車で中国入り 2日午前に北

ワールド

英首相、官邸チーム刷新 シャフィク元中銀副総裁を経

ワールド

UNHCR、来年予算は5分の1削減へ 資金難で40
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story