コラム

軍事費5%で「経済の犠牲」は不可避...欧州が「無様な対応」を見せた理由と、中国の動向

2025年07月17日(木)18時16分

アメリカは今後も国際紛争に介入してくれるか

ロシアは戦後社会の常識を覆し、ウクライナ侵攻に踏み切った。イスラエルとイランの紛争も激化するなど国際紛争のリスクが高まっている状況に加え、アメリカでトランプ政権が誕生したことも大きい。

トランプ政権の主な支持層はアメリカ第一主義を主張しており、国際紛争への介入に否定的な人が多い。今回、トランプ政権はやむを得ずイランへの爆撃を実施したものの、国内には反対の声も大きく、今後もこれまでのようにアメリカが国際紛争に積極的に介入してくれる保証はどこにもない。

トランプ政権は当初からNATOに懐疑的であり、安全保障を確実なものにしたければ欧州各国はもっと軍事費を負担すべきだと強く主張していた。欧州がこの要求をあっさりと受け入れてしまい、GDP比5%という驚くべき数字を出してきた背景には、ロシアに対する脅威に加え、アメリカが今後、国際紛争から手を引くことに対する恐怖感があると考えられる。


これまで欧州は、アメリカにある種の「物言い」ができるという立ち位置を演出してきた。だが、今回、欧州各国が動揺を隠すこともできなかった現実はあまりにも重い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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