コラム

トランプ関税、日銀にとっては「実はありがたい」? うまく活用できれば日本の消費者の助けに

2025年06月04日(水)18時31分
トランプ関税で得をするのは日銀か

STANISLAV KOGIKUーSOPA IMAGESーREUTERS

<アメリカ政府による「高関税政策」が世界経済にとってマイナス要因であることはたしかだが、適切な金融政策を推進できずにいた日銀にとっては好材料となる可能性が>

トランプ関税の実施によって、日銀の金融政策を取り巻く環境に変化が生じ始めている。アメリカの高関税政策は世界経済にとってマイナス要因だが、状況次第では金融正常化の側面支援となる可能性もある。

日銀は大規模緩和策からの撤退を目指し、金利の引き上げを進めている。金融正常化は国内景気にとって逆風となることに加え、金利上昇に伴う住宅ローンの負担増や国債の利払い費急増などが予想されるため、日銀は思うように利上げを進めることができていない。


こうしたなか、出てきたのがトランプ関税である。トランプ政権は、アメリカの貿易赤字削減を政策目標として掲げており、アメリカへの輸入に対して高関税をかけるとともにドル安を志向している。

日本円に対しては、切り上げを望む流れとなっており、アメリカの意向を受けて為替市場では既に円高が進んでいる状況だ。一連の動きは日本の金融政策にも影響を及ぼすことになりそうだ。

先ほども述べたように、日銀は金融正常化を進めたいと考えているものの、利上げによる弊害にも留意する必要がある。一方で、国内経済は円安による輸入物価の上昇に苦しんでおり、物価の安定を強く求める声が日増しに高まっている。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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