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裏と表が反転する──nendoが東京の職人と紡いだ、バッグの新たな可能性

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2026年2月26日(木)14時15分
※Pen Onlineより転載
BAG MAKERS TOKYO(BMT)とnendoのコラボMAQL

(C)Allan Abani

江戸時代から続く浅草橋の袋物文化が、デザインオフィスnendoの手によって現代に蘇る。見えない部分にこそ宿る日本の美意識を、どう可視化するか。その答えは、バッグそのものを「めくる」体験にあった。

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(C)nendo

東日本バッグ工業組合が2021年に立ち上げた産地ブランド「BAG MAKERS TOKYO(BMT)」。江戸時代から代々、浅草橋周辺で袋物を作り続けてきた職人たちの有志によって組成されたこのブランドが、デザインオフィスnendoとのコラボレーションによって、バッグの概念を覆す新作を発表する。

2026年1月30日(金)から3日間、銀座 蔦屋書店にて展示会『BAG MAKERS TOKYO ’26 EXHIBITION』が開催された。nendo×BMTのコラボレーション製品をはじめ、BMT認証企業のうち、製品認証制度の審査を通過した「認証製品」が展示された。


以下は、今回のコラボレーション製品について、nendoが示すデザインの背景や意図である。

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(C)Allan Abani

日本の美意識を可視化する

江戸時代から代々袋物を作り続けてきた、浅草橋周辺の職人たちの有志が中心となって組成した東日本バッグ工業組合の新ブランド『BAG MAKERS TOKYO(BMT)』。nendoは、脈々と受け継がれてきた伝統や美意識、職人たちの技術の高さを伝えていくことを目指し、バッグとしての表現の可能性を探究した。

日本では古くから着物の裏地に意匠を入れるなど、隠れたところにまで気を遣い、そこに品を見出してきた。これは職人の高い技術と、見えない細部まで手を抜かない丁寧なモノづくりの表れでもある。

一方で、実際に目に触れ、感じ取れる機会は少なく、多くの人にとって実感しにくい価値にもなっている。そこで、気づかれにくい細部まで仕上げる職人の技術を隠すことなく魅力を伝える表現として、裏を表と同等に扱うことを目指した結果、裏と表が曖昧なハンドバッグを開発することになった。

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(C)nendo

めくることで現れる、バッグの本来の姿

まず、バッグには革の表側の銀面(シボ)と裏側の床面(スエード)を積層した素材を用意し、裏側のスエードだけが露出したバケツのような形状を作った。ここからフチをめくっていくことで、バッグ本来の意匠面やハンドルが現れ、まるで表が裏から現れるような表現を可能とした。

また、このめくってバッグを形作る操作は使い手自身の手で行うことを前提とし、製品の裏表にまんべんなく触れながら見てもらえることで、バッグに注ぎ込まれた技術や素材の良さをより強く感じ取れることに期待した。

めくり心地をスムーズにしながらバッグとしての魅力を保持するために、2層の素材の間にはウレタンの芯材をはさみ、より立体的な表情になるよう、あらかじめ型に押し当てながら成形したシートを縫製。さらに、めくった際にふっくらとした張り感を伴った覆われ方になるよう、縫い合わされた端部に切り込みを均等のピッチで加えた。

裁断面のコバ処理には、着色した塗料によって意匠を際立たせることが一般的だが、あえて裏を思わせる積層された素材そのものを見せる工夫を凝らした。

小物入れとブランド名「MAQL」

スケールを小さくした小物入れも合わせてデザインし、チャームとしてハンドバッグに取り付けることが可能。めくることができる最小のサイズかつ仕様によって、財布などの小物をつくる職人の精緻な技術を感じ取れるようにした。

これらのアイテムに共通した、覆われているものを現し出すことの語源である『捲る(まくる)』から、ブランド名を『MAQL』とした。ロゴデザインにおいても『A』の文字を反転させ、裏と表の曖昧さを強調。バッグに施されたロゴはフチをめくることでロゴ全体が反転するため、一層の曖昧さをもたらした。

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(C)nendo

裏と表の曖昧さが連なって職人の技が結晶化したことで、バッグとして使用しても、インテリアに置かれていても雰囲気をつくるような、ファッションと工芸の間のような表現となった。

江戸から令和へ。見えない部分にこそ宿る日本の美意識を、現代の文脈で可視化する──。nendoと東京の職人たちが生み出した「MAQL」は、日本のモノづくりの本質を体験するためのメディアなのだ。

今回の展示会では、各製品に付されたQRコードをスキャンすれば、製造企業の情報、使用素材、製作工程、職人のコメントまで、製品の「裏側」を知ることができる。さらに、ECサイトと連動したショールーミング体験により、会場で気に入った製品をその場で購入することも可能だ。リアルとデジタルを横断する新しい消費体験が、ここにある。


BAG MAKERS TOKYO
https://bagmakers.tokyo
※本事業は、東京都中小企業団体中央会の中小企業組合等新戦略支援事業に係る特別支援「デジタル技術を活用した販売力強化プロジェクト」の委託を受けて実施しています。

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