コラム

軍事費5%で「経済の犠牲」は不可避...欧州が「無様な対応」を見せた理由と、中国の動向

2025年07月17日(木)18時16分
NATOがアメリカに従って軍事費を5%に引き上げ

ALEXANDROS MICHAILIDIS/SHUTTERSTOCK

<NATO各国がGDP比5%の軍事費を目標に掲げたが、これはウクライナ侵攻後のロシアのような戦時経済的な水準であり経済への悪影響は不可避となる>

ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の悪化に伴い、NATO各国がGDP比5%(最低3.5%を中核支出に、最大1.5%を関連インフラに)の軍事費を目標に掲げたことが波紋を呼んでいる。

5%を超える軍事費は戦時経済レベルであり、確実に景気に悪影響をもたらす。それにもかかわらず、欧州がこの数字を持ち出した背景には、何とかアメリカを引き止めたいという大きな焦りがある。

経済と軍事費の関係には明確な相関があり、GDP比2%程度というのが全世界的な平均値となっている。アメリカはもう少し高く3%を超えるが、成長が著しい中国は1%台と余裕がある状況だ。


GDP比3%程度までであれば、問題なく通常の経済を運営できるが、5%以上の水準になってくると戦時経済的な要素が濃くなり、経済への悪影響が不可避となってくる。ちなみにウクライナ侵攻後のロシアは恒常的に5%を超える状況であり、インフレなど経済に対して明らかなマイナスとなっている。

これまでの欧州はアメリカと比較して経済規模に対する軍事費の比率は低く推移しており、ドイツに至っては一時は日本並みの水準だった。ロシアや中東など地政学的リスクの大きい地域と隣接しているにもかかわらず、この程度の軍事費で済んでいたのは、日本ほどではないにせよ、安全保障における多くの部分をアメリカに依存していたからにほかならない。

ところが、こうした状況を大きく変えたのがロシアによるウクライナ侵攻とアメリカの外交方針の転換である。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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