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アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格高騰背景に続々登場

2026年03月07日(土)09時49分

2月24日、バルセロナ中心部でスーツケースを手に移動する観光客。REUTERS/Nacho Doce

Corina Pons Iain Withers

[マド‌リード/ロンドン 27日 ロイター] - 欧州では、住居費高騰の‌あおりを最も大きく受けている若者向けの新たなビジネスが続々と登場​している。

スペインの新興企業アビタシオン・ドット・コムは、マンションの個室を切り売りする手法を導入。英国の不動産会社⁠フェアビューは、友人などと共同で住宅​を買うことを希望する人を支援する制度を展開する。

背景にあるのは、住宅が日増しに手が届きにくい存在になっている現実だ。欧州連合(EU)欧州委員会によると、過去10年間に域内の住宅価格は所得を10%上回るペースで跳ね上がった。またあらゆる指標からは、若者が感じるひっ迫度合いが最も深刻なことがうかがえる。

欧州委は昨年12月、住宅を購入しやすくす⁠る計画を打ち出した。だが、まだ具体化されておらず、民間セクターが先行する形で商機を得ようと動いている。

スペインの首都マドリードや他の大都市のバルセロナなどは、短⁠期休暇用賃貸​需要が急増して住宅不足が深刻化する中で、アビタシオン・ドット・コムが最高8万ユーロ(9万5200ドル)で個室の販売に乗り出した。これは同じ立地のワンベッドルーム物件住戸の価格の約3分の1にとどまる。

同社によると、昨年は200室を販売したほか、3万2000人の待機リストを抱えており、ウェブサイトには7都市の販売物件が掲載されている。

オリオル・バラス創業者兼最高経営責任者(CEO)は、住宅購入向け資金繰りのひっ迫と生活環境変化への解決策を提供していると説明する。公式統計に基づくスペイ⁠ンの平均月給は過去10年で26%増加したが、不動産価格はこの間に81%も上昇した。

バラス氏は「人々は‌もはや結婚せず、結婚しても子どもは持たないか、子どもはずっと先になる。彼らが必要としているのは、⁠従来に比⁠べてずっと狭い生活スペースと、はるかに手頃な価格だ」と語った。

ただ、買い手は共同所有者もしくは共同の借り手になるための相性診断の質問書に回答しなければならず、購入時に利用できるのは住宅ローンよりも金利が高い個人ローンだ。売却時はアビタシオンを経由する必要もある。

購入を検討していたある男性は、結局現在在住するマドリードで部屋を見‌つけることができなかった。また、パートナーを巡るリスクにも言及した。

一方、英首都ロン​ドンではフェ‌アビューが住宅の単独購入が難⁠しい若者向けに、友人や身近な人と一緒に買​えるように最大2000ポンド(2726ドル)の法務費用サポートなどを盛り込んだ「バディ・アップ」と呼ばれる支援制度を提供している。

さらに英国、フランス、ドイツ、イタリアの銀行は、2008年の金融危機後に姿を消した頭金ゼロ、ないしは頭金要件が非常に低い住宅ローンを復活させた。これらのローンは通常なら高く安定した収入を提示しなければならず依然として実行例は少ないが、頭金を貯められな‌いものの持ち家を切望している人々にとって利用可能な選択肢になっている。

スペインに話を戻すと、マドリード中心部でアパートを借りている36歳のエンジニアは、同地域で売られている約100万ユ​ーロの物件にはとても手を出せないため、代わりに投資会⁠社を通じてスペイン南部に賃貸用物件を購入。「家賃の支払いに役立てるか、将来売却する」と話す。

この投資会社は、物件全体を購入する余裕がない人向けに、スペインやアイルランドの賃貸住宅について最低2万ユーロの持ち分投資​も提供している。

結局のところ、初めて住宅を買おうとする人々にとって市場環境が厳しいため、このような法的に複雑でコストもかかる新しい住宅購入の仕組みが現実的な選択肢になろうとしていると不動産コンサルタントの1人は指摘する。

このコンサルタントは「人々がどんどん貧しくなっていることを示すのが、このような仕組みだ」との見解を示した。

ロイター
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