コラム

わが町の市への昇格が名誉だけど残念な理由

2022年07月01日(金)16時45分

すると昨年、エセックス州の他の町が市になった。サウスエンド・オン・シーだ。雰囲気はいいが独創性に欠ける海辺の町。列に割り込んで追い抜かれた形だが、コルチェスターの人々は状況が状況だから不平を言えなかった。国会議員がイスラム主義者のテロリストに殺害される事件が起こり、この議員が長年サウスエンドを市に、と尽力していたことに敬意を表して死後に願いが叶えられたのだ。

そんなわけで僕は、エセックスから3つ目の市はあり得ないのではないかと心配になった。でも杞憂だった。今年、ジュビリーを記念して、8つの新たな市が発表された。コルチェスター、レクサム(ウェールズ)、バンガー(北アイルランド)、ドンカスター(インランド中北部サウス・ヨークシャー州)、ダグラス(マン島)、ダンファームリン(スコットランド)、ミルトンキーンズ(イングランド南東部の「ニュータウン」)、スタンリー(フォークランド諸島)だ。またしても「バランス重視の偏見」が見て取れると思う。

僕のちょっとした問題は、自分の町が市に昇格したところで、基本的に何の恩恵もないということ。市になったのはまさに「名誉」だが、山ほどの他の場所も同じ名誉を授けられ、州内でその名誉を得るのが「3番目」であり、同じく名誉ある地位を得た場所は人口たった2100と言うありさまで(スタンリーのこと)、いくつかは聞いたこともないような場所(セント・アサフよ、すまない)であり、おそらくいくつかはよその人から混同されるような場所である(僕が大学時代の友人に「まだチェルムスフォードに住んでるのか、コリン?」とたまに言われるように)、という状況では、当然ながら名誉の度合いも低下する。

米コメディアン、グルーチョ・マルクスの名言を言い換えるとこうだ。「自分のようなメンバーがいるクラブに誰が入りたがるのか......」

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾国民党主席、南京で孫文の墓所訪問 中国との和解

ビジネス

街角景気3月は6.7ポイント低下、中東情勢でマイン

ワールド

習主席、「中国流」サービス業目指す 需要主導と技術

ワールド

北朝鮮が弾道ミサイル発射と日韓が発表、前日に続き
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 7
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 8
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story