コラム

日本の酷暑にも負けていない、この夏のイギリスの熱波

2018年07月31日(火)15時30分

この夏はヨーロッパにも熱波が到来(画像は英南部ブライトンビーチ、2015年6月) Darren Staples-REUTERS

<雨が多いイメージとは裏腹に、もう何週間も雨の降らない熱波が続くこの夏のイギリス。日本ほどの暑さではないが何しろ日照時間が長く、日差しが全てを焼き尽くす>

6月16日の父の日は雨になると言われていたのに降らなかった。実際、天気予報では激しい雷雨、となっていた。僕がそんなことを覚えているのは、いつになく僕が大雨を「望んで」いたからだ。あの時点で、夏はまだほんの始まったばかりだというのに、既に何週間も雨が降らない日が続いていた。

僕の家の庭には屋根から落ちた雨水を集めてためる桶がある。何日か雨が降らないときにはその水を庭の水やりに使うことにしているが、この桶が父の日の何日も前から空になってしまった。そして庭は既に干上がった状態だった。だから僕はあの日、一降りザッとやってきて庭をよみがえらせたうえ、次の雨まで乗り切れるだけの水がたまるのも期待していた。

あの日以来、思い返せばたった1度しか雨が降っていない(3週間前に20分くらい降ったことがあった)。イギリスの夏は日本のような暑さはないけれど、日照時間がとても長い。太陽は午前5時ごろに上り、午後9時ごろに沈む。雲一つない空を太陽がじりじりと横切り、庭の隅々まで焼き尽くす。

草は枯れる。地面はコンクリートのように硬くなる。高くしぶとく伸びた雑草が、しなびて枯れるのを見た。雑草ですら生き延びられないなんて! 特にイングランド北部では、森林火災も何件か発生している。水不足でホースの使用が禁止された地域もあり、この天気が続けば他の地域でも同様の措置が取られるだろう。

この夏は、ふろの水を庭の水やりに再利用するよう言われている。僕は洗濯後の水を使い続けているから、僕の庭は少し洗剤の匂いがする。

雨の少ない地域で人口急増

こういったことは、おそらく日本の人々が抱くイギリス(またはよく言われるとおり「雨の多いイギリス」)のイメージからはかけ離れたものだろう。でもこれは決して異常事態ではない。単に、一般的に言われているほどには雨が降らないという理由で、イギリスは数年に一度はこんな綱渡り状態になる。
 
1年のうちだいたい100日くらいは少し雨が降り、さらに100日かそこらは曇りの日があるから、人々(イギリスの人々を含む)は、イギリスは天気が悪いという「印象」を持つことになる。僕がアメリカにいるときアメリカ人から時折言われたのが、ロンドンに丸1週間いたのに「1回しか雨が降らなかったよ!」と、まるでめったにない幸運に恵まれたかのような言葉だった(その幸運に恵まれる確率は、夏に訪れたのなら50%以上なのだが)。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、9月はマイナス12.9に

ワールド

イスラエル軍とヒズボラ、レバノン国境で攻撃の応酬 

ビジネス

スト継続中は賃金支給せず、サムスンがインド工場従業

ビジネス

再送-米政府、バッテリー製造関連の25プロジェクト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 2
    NewJeans所属事務所ミン・ヒジン前代表めぐりK-POPファンの対立深まる? 
  • 3
    他人に流されない、言語力、感情の整理...「コミュニケーション能力」を向上させるイチオシ書を一挙紹介
  • 4
    「ゾワッとする瞬間...」大ヘビが小ヘビ2匹を吐き出…
  • 5
    口の中で困惑する姿が...ザトウクジラが「丸呑み」し…
  • 6
    ヒズボラの無線機同時爆発の黒幕とみられるイスラエ…
  • 7
    トランプを再び米大統領にするのは選挙戦を撤退した…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    がん治療3本柱の一角「放射線治療」に大革命...がん…
  • 10
    「テレビから消えた芸人」ウーマン村本がパックンに…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 3
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 4
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 5
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 6
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 7
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 8
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 9
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 10
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 9
    ロシア国内クルスク州でウクライナ軍がHIMARS爆撃...…
  • 10
    「ローカリズムをグローバルにという点で、Number_i…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story