コラム

DataRobot使ってAI予測モデル4000個完成。リクルート社内で進む人工知能ツールの民主化

2017年03月22日(水)18時15分

全社員がAIツールを使いこなす時代になってきた AIgilaxia/iStock.

<グーグルを辞めてリクルートAI研究所の所長になったアーロン・ハーベイ氏は、リクルートが社員向けにAIツールを何も用意していないことに驚いたという。日本のテック企業はキャッチアップできるか>

「AI for everybody(AIの民主化)」。米Microsoftの最近のキャッチフレーズだ。だれもがパソコンを使えるようになったことで企業の生産性が格段に上がったように、これからのビジネスマンはだれもがAIを使いこなせるようにならなければならない。Microsoftを始め米国のテック企業は、そう考えて動き始めている。日本では、リクルートが一般社員向けにAI関連ツールを導入し始めており、半年間でAIの予測モデルが4000個以上も完成するなど、早くもその成果が表れ始めているという。

AI化の3つのレベル

企業のAI化には3つのレベルがあると言われる。レベル1は、AIの技術者を一人採用する、というレベル。レベル2は、AI專門の組織を設置する、というレベル。そしてレベル3は、従業員ならだれでもAIを自在に操作できるというレベルだ。現場のニーズを知り尽くした担当者がAIを自由に操作することができれば、その企業の生産性は一気に向上するはず。

Google、Facebookといった米国のトップレベルのテクノロジー企業は、既にレベル3に達していると言われている。これらの企業では、社内エンジニアの半数が、社内のAIインフラ、ツールの開発、メンテナンスに充てられているのだそうだ。

私は昨年秋にリクルートがシリコンバレーに設立したAI研究所を取材してきたが、Googleを辞めてリクルートAI研究所の所長になったAlon Halevy氏は、リクルートが社員向けにAIツールを何も用意していないことに当初は驚いたという。

【参考記事】元Googleの大物研究者がリクルートのAI研究トップに就任する意味

そこで同AI研究所では、データ前処理やデータ統合のツールの開発や導入を急いでいるという話だった。

脅威のツールDataRobot

リクルートはまた、予測モデルをほぼ全自動で開発できるDataRobotというツールをいち早く導入している。

予測モデルとは、過去のデータを統計処理することで傾向をつかみ、将来を予測する計算式のこと。

例えば天気のデータとアイスクリームの日々の売上のデータを統計処理すると、温度が何度上昇すればアイクリームの売上がどの程度増えるかを予測できるモデルを作ることができる。購入した本と購入者の属性データを組み合わせると、どのような人にどのような本を勧めれば売り上げにつながるのか、といったことも予測できる。

こうした予測モデルを作ることは、これまではデータサイエンティストと呼ばれる統計処理の専門家の仕事だった。ところが、DataRobotというツールは、データさえ用意すれば予測モデルをほぼ全自動で開発してくれる。脅威のツールだ。

【参考記事】AIはどこまで進んだか?──AI関連10の有望技術と市場成熟度予測

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送中国サービスPMI、8月は53.0 15カ月ぶ

ワールド

豪GDP、第2四半期は約2年ぶり高い伸び 消費支出

ワールド

タイ与党、下院解散を要請 最大野党がライバル首相候

ビジネス

政府と連絡とりつつ為替市場の動向モニターしていきた
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 8
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story