コラム

元Googleの大物研究者がリクルートのAI研究トップに就任する意味

2015年11月05日(木)16時51分
元Googleの大物研究者がリクルートのAI研究トップに就任する意味

すべてのサービスにAIを投入する時代はすぐそこに(チューリヒ大学AI研究所の展示)

 株式会社リクルートホールディングスは、人工知能(AI)の研究機関であるRecruit Institute of Technologyの研究開発拠点を米シリコンバレーに新設し、研究トップに元Googleの大物研究者Alon Halevy(アーロン・ハーベイ)氏を起用すると発表した

 このことは実はとても大きな意味を持っている。リクルートが、Google、Facebookと並ぶ世界的なテクノロジー企業に進化する可能性が出てきたからだ。

すべては研究トップ次第

 今年6月に米シアトルを訪問した際にAI研究者のOren Etzioni氏に、企業がAI研究所を運営する上で最も大事なことは何なのかを聞いたところ、同氏は「トップにだれを連れてくるかだ」と即答した。

「バイドゥのAI研究所を知ってるか?バイドゥのAI研究所に今、優秀な若手研究者が続々と集まっている。なぜならNg先生がトップだからだ」。

 バイドゥとは中国のインターネット企業大手の百度のこと。Ng先生とは、人工知能の著名研究者の一人で元スタンフォード大教授のAndrew Ng氏のことだ。

 バイドゥがシリコンバレーにAI研究所を設置し、Ng氏をトップに起用したことは知っていた。Ng氏は自分が中国系米国人なのでバイドゥの研究所に勤務することに抵抗はないだろうが、米国の若手研究者たちが中国企業のために研究したいと思うだろうか。優秀な人材は集まりそうにないだろうな、と思っていた。

 ところがEtzioni氏によると、Ng氏の下で研究したいという若手研究者がバイドゥ研究所に集まり、成果を出し始めたという。「とてもいい研究所になってるよ」と言う。

 ほんの2,3年前までは、優秀な研究者、エンジニアを集める方法は、給料を上げることだった。20代前半のエンジニアが年俸2000万円以上で引き抜かれるという話をあちらこちらで耳にしたものだ。ところがAI研究に関しては、若い研究者は、金よりも成長の機会を重視しているのだと言う。

 なので私自身、リクルートがAI研究のトップにだれを連れてくるのかにとても興味があった。

Halevy氏は超ド級

 リクルートがトップに起用したのは超ド級の研究者だった。

 Alon Halevy氏は、ワシントン大学教授時代にベンチャー企業を2社創業し、うち1社がGoogleに買収されたのを機に、Googleに移籍。Googleでは10年間に渡りGoogle研究所の構造化データ部門の研究責任者を勤めた。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。

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