コラム

米国大統領選挙を見据えて、誰がポスト安倍の最も良い選択肢か

2020年09月04日(金)15時15分

日本首相として米国のカウンタ―パートとなる人物の条件は...... REUTERS/Toru Hanai

<米国大統領選挙を見据えて、日本の首相に誰が選ぶべきであるのか。日本と東アジアの未来を左右する重要な決断となるだろう...... >

安倍首相が持病の悪化によって退任し、ポスト安倍候補として、菅義偉官房長官、岸田文雄自民党政調会長、石破茂元幹事長が名乗りを上げている。

安倍首相に代って日本の外交・安全保障面の安定性からベストと言える選択肢は一体誰になるのか?その質問に対する回答は11月に控える米国大統領選挙の状況を考慮すれば自然と見えてくるものだろう。

言うまでもなく、日米同盟は日本の外交・安全保障の支柱であり、東アジア情勢に安定をもたらす公共財の役割も担っている。そのため、日本と米国の関係がギクシャクした場合、米中覇権争いが激化する中で、国際情勢は未曽有の混乱状態に陥っていくことになるだろう。

米国の外交・安全保障方針は超党派で対中抑止の方向で固まってきているものの、共和党・民主党の政権選択は、軍事費の多寡、外交上の大義名分、世界的なリソースの投入バランスに影響を与えるため、トランプorバイデンという選択は極めて重要な問題だ。

現在、11月の米国大統領選挙ではトランプ大統領とバイデン元副大統領が激戦を繰り広げている。バイデン元副大統領が全体としてやや優勢な状況ではあるが、直近1か月間でのトランプ大統領の追い上げは十分に形勢逆転の可能性があることを示している。

共和党・民主党のいずれであっても対応できる経験・能力がある人物は

そのため、日本首相として米国のカウンタ―パートとなる人物の条件は、米国が共和党・民主党のいずれであっても対応ができる経験・能力がある人物ということが言えるだろう。そして、その条件を満たせる人物は、名前が挙がっている中では菅官房長官しかいない。

岸田政調会長は2012年から2017年8月まで外務大臣を務めている。外相時代の大半はオバマ政権を相手にしたものであった。バイデン元副大統領の外交・安全保障スタッフの中心はオバマ時代からのメンバーを引き継いでおり、その意味では岸田氏にもアドバンテージは存在する。

ただし、トランプ政権発足後、岸田氏は半年程度で後任の河野外相に交代したため、トランプ政権との交渉に十分な経験があるわけではない。対共和党政権の経験は福田内閣でブッシュ時代に1年間未満、沖縄担当相を務めた経験のみだ。また、政策発表時の記者会見の内容は「米民主党のコピー」のような印象を受ける内容であり、その政治的メッセージはトランプ再選をほとんど念頭に置いていないように見えた。筆者はトランプ政権存続を軽視してバイデン政権誕生に傾斜しているように見える岸田氏の偏った政治姿勢は、現時点では日本の外交・安全保障の観点からリスクであるものと判断する。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story