コラム

7つのキーワードで知る「土用の丑」とウナギの今──完全養殖に高まる期待と「シャインマスカットの反省」

2025年07月19日(土)10時00分
うな重

kai keisuke-Shutterstock

<「土用の丑の日」の「土用」とは? 「夏の土用の丑の日」にウナギを食べる習慣はいつできた? 完全養殖は今どこまで進んでいる? 基礎知識から最新科学まで、土用の丑とウナギについて7つのキーワードで概観する>

梅雨明けしていよいよ夏が本番を迎えると、夏バテや冷房病(冷房負け)による食欲不振も本格化します。今も昔も夏に精がつく食べ物の代表格は「ウナギ」。7月の後半になると、専門店やスーパーでは「土用の丑」の宣伝が目立つようになります。

2025年の「夏の土用の丑の日」は、7月19日と31日の2回。普段はあまりウナギを食べなくても、この日だけは購入したくなるという人も多いでしょう。


もっとも、いざ買おうとすると、「天然ウナギ」「国産ウナギ」「中国産養殖ウナギ(ニホンウナギ)」などの表記に戸惑うかもしれません。ウナギの生態が謎に包まれていたために難しかった「完全人工養殖ウナギ」も、近年は民間企業に技術移転され始め、ホットな話題となっています。

土用の丑とウナギについて、基礎知識から最新科学まで7つのキーワードで概観しましょう。

◇ ◇ ◇

1.「土用の丑の日」は夏だけでない?

「土用」は古代中国の「五行思想」に由来を持つ、季節の変わり目を指す言葉だ。

五行思想では、万物は火・水・木・金・土の5種類の元素から構成される。さらに、四季の変化は五行の推移によって起こると考え、春は木、夏は火、秋は金、冬は水に象徴され、残った「土」は季節の変わり目を示す。

四立(立春、立夏、立秋、立冬)前の約18日間は「土旺用事(どおうようじ):土が最も旺盛な用事(作用)をする期間」で、「土用」と呼ばれるようになった。

一方、「丑の日」は十二支に基づく日付のことで、12日周期で割り当てられている。つまり、「土用の丑の日」は、「春夏秋冬の土用期間中に現れる丑の日」を意味する。春は4月中旬~下旬頃、夏は7月下旬〜8月上旬頃、秋は10月下旬頃、冬は1月下旬頃に訪れる。

土用期間は約18日間あるため、12日周期のタイミングによって「夏の土用の丑の日」は1日だけの年と、25年のように2日現れる年がある。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

金総書記が北京到着、娘も同行のもよう プーチン氏と

ビジネス

住友商や三井住友系など4社、米航空機リースを1兆円

ビジネス

サントリー会長辞任の新浪氏、3日に予定通り経済同友

ワールド

イスラエル予備役約4万人動員へ、軍高官が閣僚と衝突
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 5
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 6
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 7
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 8
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story