コラム

小池知事に聞いてほしい、東京都が学ぶべきEUの留学制度

2025年04月09日(水)17時20分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト、講師)
東京

METAMORWORKS/SHUTTERSTOCK

<若者海外留学支援制度を始める東京都の小池都知事にぜひ知ってほしい、40年の歴史を持つEUの留学支援システムの優れた点とは>

6人に1人──外務省の発表によれば、日本人のパスポート所持率は17.5%しかない。イギリスの77%、カナダの70%、そして韓国の42%と並べてみれば、これがどれほど低い数字かが分かる。

旅券なしで外国へバカンスに出かけるのはもちろん不可能だが、それより大きな問題がある。海外留学の「低落」だ。


日本がいかに心地よい場所でも、海外留学や研究でしか得られないものがある。それは特殊なスキルだったり、国際ネットワークだったりする。そして肝心な異文化適応力も。

野村総合研究所の「NRIマネジメントレビュー」が指摘するように、スタートアップが発達する環境をつくるには「地域内の経済的、社会的、文化的、政治的、物理的要素の組合せ」が必要。日本も例外ではない。これらの要素を海外で身に付ける人が大きく不足すると、グローバル人材がその分だけ減り、国際競争力を失う懸念がある。

この問題に真っ向から向き合うのが、東京都の新しい若者海外留学支援制度だ。保護者など生計を維持する人が都内に在住する国内の大学生や高専生を対象に2026年度から始まるこの制度では、渡航費、授業料および現地活動費を含む留学経費として、最大315万円が助成される。重要なのは、保護者の所得制限が設けられていないこと。この取り組みは低所得家庭への応援ではなく、世界で活躍する人材を育成し、国際競争力の強化を目指すのが狙いだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

韓国通販大手クーパン、3370万人分の顧客情報流出

ワールド

中国製造業PMI、11月は49.9に低下 予想も下

ビジネス

データブリックスが増資交渉中、評価額1340億ドル

ワールド

韓国、11月輸出は予想上回る 半導体・自動車がけん
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story