最新記事
日本社会

まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的増加

2025年4月9日(水)11時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
ベンチに座る高齢者

入院時の身元保証や遺産整理など身寄りのない高齢者への公的支援は拡充される方針だが photoAC

<2050年には後期高齢者の5人に1人が、配偶者も子もいない人になる>

厚生労働省は、身寄りのない高齢者への支援を拡充する方針を明らかにした。身寄りのない高齢者の入院時の身元保証や、死後の財産整理といった業務を、各地の社会福祉協議会等が行う、というものだ。これまでは民間任せだったが、今後は「公」も参入することとなる。

日本では高齢化と同時に未婚化も進んでいて、これから先、身寄りのない高齢者が増えてくるのは間違いない。75歳以上の未婚者は、2000年では18万人だったが2020年では63万人(総務省『国勢調査』)。結婚したことがなく、配偶者も子もいない後期高齢者だが、20年間で3倍以上に増えている。今では団塊世代も入っているため、数はもっと膨れ上がっているはずだ。


あまり考えたくはないが、2050年ではどうなっているか。この年の75歳以上人口の推計値は2433万人。このうち未婚者がどれほどかは、2020年時点の同一コーホート(集団)の未婚率から推し量れる。

newsweekjp20250409015307-ce500dc87e07c9734899ea8b06f4cc2fadb3387d.png

2050年の75~79歳は、2020年時点では45~49歳。この年齢以降、結婚する人はほとんどいないので、この時点の未婚率を生涯未婚率とみなし、30年後にスライドしてもいいだろう。このやり方で2050年の各年齢層の未婚率を仮定し、未婚者の実数を見積もると表の右端のようになる。

5つの年齢層の未婚者を合算すると、2050年の75歳以上の未婚者は434万人ほどと推計される。2020年の63万人の7倍以上だ。75歳以上人口全体に占める割合も、3.5%から17.8%へと爆上がりする。近未来では、後期高齢者の5人に1人が身寄りのない人となる。入院時に身元保証人を立てられず、民間の高額な代行サービスを利用できない人も多くなるだろう。冒頭で述べたような、公的な支援の拡充が求められる所以だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中