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参院選が引き起こした3つの重たい事実

参院選の与党敗北を受けて石破首相は進退が問われている(写真は昨年10月の衆院選後の会見) Kim Kyung-Hoon/Pool/REUTERS
<与党にノーは突き付けたが、政権交代を担う「責任野党」も出てこなかった>
参院選の結果は、選挙戦の終盤に様々な形で飛び交った予想よりは、自民党が善戦したと思います。ですが、結果的に与党の敗北、小党乱立という結果となったのは間違いありません。その結果として、3つの重たい事実が残りました。
1つは、外国人労働者の問題です。参政党が主張した「日本人ファースト」というのは、実は曖昧なスローガンであり具体性には乏しいものです。そうではあるのですが、漠然と社会に浸透していた「このまま外国人労働者が増えれば、日本社会が変わってしまう」という不安を票にすることに成功したと見ることができます。
さしあたって具体的な影響があるとは思えませんが、海外での報じられ方は意外に大きなものがあります。その結果として、「どうやら日本で働いたり留学することで、不快な思いをすることが、この先、増えていきそうだ」という印象が広がったのは間違いありません。では、外国人労働者のニーズが減らせるかというと、全国の多くの業種で人手不足が顕著な中、ニーズは減りません。
そうなると、最終的には「多少嫌な思いをしても日本で稼ぎたい」、つまりは「本当は英語圏に行きたいが、語学や初期投資の点から次善の策として日本を目指す」ような層が増えることになります。これからの日本は「外国人にフレンドリーではなくなりそうだ」という情報発信の結果、来る人材の質が徐々に下がるという効果だけが出てくる危険があると思います。
さらなる財政悪化の可能性
2つ目は、財政規律の緩みです。今回の選挙結果からは、消費減税が民意だということに事実上なっています。もちろん、減税も給付も今後の国会での駆け引き次第では、どうなるかは分かりません。ですが、民意は減税を望んだのは事実です。そして、財源は示されていません。ということは、財政はさらに悪化する可能性が出てきたと思います。
日本の国家債務はGDPの200%以上という超危険水域にありながら、国民の個人金融資産と相殺されているので国家としては対外債務は少ないという「神話」が続いていました。ですが、この「神話」が終わる日が接近することになります。今は、日本の金利が低すぎて、アメリカの金利が高いので金利差で円安になっており、輸入に頼っている食料、エネルギー、資材が高騰して物価高になっています。
ですが、このまま財政規律を緩めていけば、円の価値が下がり、金利を上げないと国債の借り換えができなくなる日が来ます。そうなれば、超円安とハイパーインフレの時代に突入し、現在では考えられないような生活苦に国民が直面する可能性があります。そのような破綻的な危機を回避するための堤防が、今回の選挙結果により徐々に削られてしまったという見方ができます。
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