コラム

2期目のトランプはアメリカの民主主義を破壊するのか......広まる憶測と恐怖

2023年12月06日(水)14時30分

また、移民政策としては不法移民の国外退去を進めるとともに、アメリカ国内で出生しても親が不法滞在の場合は子供に市民権を与えないとしています。これは憲法に抵触するので実行は難しいとされていますが、トランプは何度もそのように主張しています。

更に、軍事外交面ではウクライナへの支援を停止するとともに、NATOからの脱退もしくは関与の著しい削減を行うという発言が繰り返されています。その理由についてトランプは、「アメリカにとって最大の脅威はロシアではなく、国内にある」からだとしています。


ちなみに、一期目の選挙戦と比較すると、昨今のトランプは日本や韓国からの駐留米軍撤退を口にすることが少なくなっています。ですが、アメリカがNATOから脱退する姿勢を示せば、西側同盟は大きく動揺し日本への影響は大きなものとなる懸念は否定できません。

では、国外展開から撤収したら、米軍をどうするのかというと、トランプが繰り返し述べているのは2つの「作戦」です。1つは、米軍をメキシコ領内に展開して麻薬マフィアを殲滅するとしています。もう1つは、民主党の知事が荒廃させた州に米軍を派遣して治安を回復するというのです。具体的には黒人の人権を主張するBLM運動やパレスチナ連帯の運動を軍事力で制圧する計画だといいます。

民主主義が破壊される

更に、このところトランプと厳しく対決してきたリズ・チェイニー前下院議員が警告しているのは、トランプは仮に2期目に当選して大統領に復帰したとしても、自分が終身恩赦され、民事訴訟も受けないという保証がされない場合、大統領を辞めないという可能性です。つまり、2029年1月に任期満了となっても、非常事態宣言などの手段を使ってホワイトハウスに居座るつもりだと指摘しています。

チェイニー氏は、こうした事態を阻止するために、大統領選へ無所属として出馬する意向を示しています。チェイニー氏だけでなく、この種の懸念の声はかなり上がっており、2期目のトランプはアメリカの民主主義を破壊するかもしれないという恐怖が囁かれています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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