職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何か?...「うつ病」との関係から予防策まで

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<真っ先に「うつ病」を疑う人が多いが、その背景を探ってみると、職場環境と自分の間の「適応」に問題がある場合が多い>
職場の環境と自分の適応がうまくいかない場合、「適応障害」に陥ることがある。
産業医・心療内科医の吉田英司は、「適応障害は基本的には療養すれば治るが、再発防止のために、原因分析をする必要がある。その際、どちらが悪いかという視点で物事を考えないことが大切だ」という――。
本記事では、吉田英司『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(かんき出版)から一部を再編集して紹介する。
※第1回:こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
※第2回:かえって体調・メンタルが悪くなる人も...「休職の前に」知っておきたい「注意点」と役立つ制度とは?
職場のメンタル不調の9割は適応障害
職場のメンタルヘルスと聞いて、1番に思いつく病名は「うつ病」でしょう。
外来でクリニックを初めて受診する患者さんからは「私はうつ病でしょうか?」との質問を多く受けます。現在の精神科や心療内科では、DSM-VやICD-11といった国際的な分類や診断基準があり、その分類から疾患を決定していきます。
ただ、実際に診察室で話を聞いていると、職場においてメンタルヘルス不調が起こる原因のほとんどは、職場の環境(業務量、業務の難しさ、人間関係)と自分(性格などの特性や、プライベートの状況)の適応がうまくいっていないことにあります。
適応がうまくできていないと、以下のようなことが起こります。
・布団に入ってもすぐに眠れない
・頭が働かなくなり、仕事が遅れる
・上司や同僚に対してイライラする
・生活が乱れてお酒の量が増える
この状況のまま時間が経過し、悪循環が進んでいくと、職場環境と現在の自分の適応がさらに悪くなります。